90年代・00年代の名盤LPが人気沸騰中! ~レコードで聴きたい90年代以降のアルバム

目次

ここ数年、90年代から2000年代にリリースされたアルバムのLPが高値で取引されていることをご存じでしょうか?

 

高額盤の多くは、アルバムをCDで聴くことが主流だった時代にリリースされたもので、世界最大の音楽データベースサイトとして知られるDiscogsをのぞくたびに驚きの連続です。某店で20年ほど前に200円で買い取ってもらったマライア・キャリーの『BUTTERFLY』(1997年)のEU盤LPが、2万円以上の値段でDiscogsに出品されていてのけぞりましたよ!

 

90年代後半にもレコードがもてはやされた時期がありましたが、当時人気が高かったのはDJプレイに使用される12インチシングル。アルバムはCDで聴いているリスナーが多かったように思います。

 

CDよりも生産数が少なかった90年代のLPは、入手しにくくなっているものが多いのでしょうね。

ALANIS MORISSETTE 『JAGGED LITTLE PILL』 LP (9362-45901-1) / Europe / 1995

アラニス・モリセットの『JAGGED LITTLE PILL』(1995年)も高額でびっくり! 1971年生まれの私からすると、懐かしいとは思いつつ「ちょっと前に出たレコード」のような感覚がありますが、若い世代にとっては大昔に作られたレコード。20歳くらいのリスナーが生まれる前に制作された作品なので当然です。

 

一般的に音楽を聴く手段がレコードからCDに移行されたのが80年代後半なので、1995年に発売されたこのアルバムをレコードで聴いていた人間は少数派だったのでしょう。

(全米で1600万枚、全世界で3300万枚を売り上げた超大ヒット作なので、相当数のアナログ盤が生産されたとは思いますが)

インスタ映えする名盤のレコードジャケット

LP人気の一因として考えられるのが、SNSの存在。インスタグラムで「#vinyl」というハッシュタグを検索すると、レコードジャケットを掲げた音楽ファンの写真が無数に現れます。

 

CDで音楽を聴いていたリスナーが「30センチ四方の大きなレコードジャケットを抱えてインスタ用の写真を撮りたい」と考えたときに、多くの方が思い浮かべるのはCDで長年愛聴しているアルバムのLPジャケットではないかと。

 

CD派にとって12インチシングルは馴染みの薄いものだと思いますし、そもそも12インチのジャケットは単色で無地のもの(プレーンスリーブ)が多いので。無地のジャケットではインスタ映えしませんよね。

MOODYMANN 『SILENTINTRODUCTION』 2LP (pe65234) / US / 1997

デトロイトハウス・シーンを牽引するムーディーマンことケニー・ディクソン・ジュニアが、カール・クレイグ主宰のPlanet Eからリリースした1stアルバム。

 

こちらも入手しにくくなってしまったようですね。近年リリースされたムーディーマンのレコードはプレス数が少なく、プレミア化するタイトルもたくさんありますが、このLPは発売当時によく見かけていたので意外な気がします。

希少な90年代ロックのLP

ということで、ここからは90年代以降に発売された作品の人気盤を紹介。当記事を作成していた2022年1月の時点で、Discogsに1万円以上で出品されていたLPの中からお気に入りのアルバムを選出いたしました。

 

まずはロックから。

 

海外生活を経験したことがないので、あくまでも国内の話になってしまいますが、90年代初頭の時点ですでにロックファンは、J-POPのリスナーと同様にCDで音楽を聴くことが主流になっていた印象があります。

 

DJが2台のターンテーブルを使ってアナログレコードでプレイすることが当たり前だったヒップホップやR&B、レゲエ、テクノ、ハウスといったジャンルに比べ、グランジやミクスチャーなどの新譜をレコードで購入していたロックファンは少数派でした。ライブハウスで顔を合わせる友人達は、NIRVANA やRED HOT CHILI PEPPERSのニューアルバムをCDで聴いていたように思います。

 

1992年くらいになると、好きな海外ロックバンドの作品がCDしかリリースされないケースも増えてきました。

■PANTERA 『COWBOYS FROM HELL』

PANTERA 『COWBOYS FROM HELL』 LP (7567-91372-1) / Europe / 1990

PANTERAの5thアルバム『COWBOYS FROM HELL』。1990年に出た作品なので、当時のメタルキッズは本作をCDで聴いていた方が多いのではないでしょうか。

 

全米44位を記録し、世界的な名声を獲得した6thアルバム『VULGAR DISPLAY OF POWER』(1992年)のアナログ盤よりもプレス数が少なかったであろう『COWBOYS FROM HELL』のオリジナル盤LPは、高値で取引されています。

 

当時、地上波で深夜に放送されていた『MTV Headbangers Ball』で観たタイトル曲「Cowboys from Hell」のプロモーションビデオは衝撃的でした。ステージ上からフロアめがけてひっきりなしにダイブする観客達と、それまでに聴いたことがなかった新しいサウンドに魅了され、数日後に『COWBOYS FROM HELL』のLPを入手。それ以来、ずっと愛聴しています。

 

1992年に実現した初来日公演では、ヴォーカリストのフィリップ・アンセルモに導かれた観客達がステージ上からダイブを連発。「Cowboys from Hell」のビデオを観て思い描いていた光景が現実に。

PANTERA解散後に結成したDAMAGEPLANのライブ中に、ステージに乱入した男に発砲されて非業の死を遂げたギタリストのダイムバッグ・ダレル。初来日公演の際に彼からもらったピックは『COWBOYS FROM HELL』のジャケットに封入して大切に保管しています。

■ALICE IN CHAINS 『FACELIFT』

ALICE IN CHAINS 『FACELIFT』 LP (467201 1) / Europe / 1990

1990年に発表されたALICE IN CHAINSの傑作1stアルバム『FACELIFT』のアナログ盤。

90年代初頭にシアトルのグランジ・シーンで活躍していたSOUNDGARDENやNIRVANAといったバンドが数々の名盤を世に送り出しましたが、それらの作品の中で一番好きだったのがこのアルバムです。

 

1992年に発表された2ndアルバム『DIRT』のアナログ盤も取引価格が高騰していますが、残念ながら所有しておりません。ALICE IN CHAINS の楽曲の中で最も好きな「Them Bones」が1曲目に収録されているにもかかわらず。

2021年11月19日公開の「特殊ジャケット! ~遊びごころ満載のレコードジャケット」という記事で紹介した12インチに「Them Bones」が収録されているので、アルバムは購入しませんでした。今さら後悔しても仕方がありませんが、買っておくべきでしたね・・・。

■RAGE AGAINST THE MACHINE 『RAGE AGAINST THE MACHINE』

RAGE AGAINST THE MACHINE 『RAGE AGAINST THE MACHINE』 LP (Z 52959) / US / 1992

セルフタイトルを冠したRAGE AGAINST THE MACHINEの1stアルバム。アメリカレコード協会(RIAA)からトリプル・プラチナに認定された大ヒット作です。

 

独創的なサウンドと、政治的・社会的なメッセージ性の強い歌詞で世界中のロックファンから絶大な支持を受けたRAGE AGAINST THE MACHINE。ジャケットにチェ・ゲバラや、拳を突き上げて黒人差別に抗議するブラックパワー・サリュートの写真などを用いたレコードやCDもリリースしていて、本作にも1963年度世界報道写真大賞受賞作品である僧侶ティック・クアン・ドックの写真(マルコム・ブラウン撮影)が使用されています。

 

以前は中古レコード店でよく見かけたし、お手ごろ価格で入手できたレコードでした。どんなレコードが値上がりするかわかりませんね。

再評価の波が高まるアリーヤのLP

2001年に22歳の若さで夭逝したR&Bシンガーのアリーヤ。

 

ジェット・リー主演の大ヒット作『ロミオ・マスト・ダイ』(2000年)でスクリーンデビューを果たし、主題歌の「Try Again」も大ヒット。『マトリックス』の続編として制作されていた『マトリックス リローデッド』のジー役に起用され、女優としても上昇気流に乗っていたアリーヤに、突然の悲劇が起こったのは2001年8月25日。彼女を乗せたセスナ機が離陸直後に墜落。世界中のファンが悲しみに暮れました。

 

アリーヤの死後(2003年)に公開された『マトリックス リローデッド』は、ノーナ・ゲイを代役に迎えて撮り直されたものです。アリーヤの出演シーンは、ほぼ撮り終わっていたとのこと。残念です。

■AALIYAH 『ONE IN A MILLION』

AALIYAH 『ONE IN A MILLION』 2LP (7567-92715-1) / Europe / 1996

アリーヤが1996年に発表した2ndアルバム『ONE IN A MILLION』。

 

制作陣に当時無名だったティンバランドとミッシー・エリオットを起用。その後のヒップホップ/R&Bシーンを席巻する2人を世に知らしめることになった作品として評価の高いアルバムです。アメリカで300万枚、全世界で800万枚の売り上げを記録したRIAAダブルプラチナ認定作品。

 

ジャケットのサインは、アリーヤに直接会って書き込んでもらったものです。1996年12月13日、新宿リキッドルームで行われたライブの開演前に、同じビルの1階にあるゲームセンターでアリーヤに遭遇。スノーボードゲームで対戦した彼女は、あどけなさの残る17歳の少女でした。

 

アリーヤの没後20年となる昨年(2021年)8月に『ONE IN A MILLION』がストリーミング解禁。直後に米iTunesで1位、ビルボードの全米アルバムチャートでトップ10入りして話題を呼びました。

■AALIYAH 『AALIYAH』

AALIYAH 『AALIYAH』 2LP (7243 8 10082 1 8) / US / 2001

墜落事故の前月(2001年7月)に発売された3rdアルバム。アリーヤが存命中に発表された最後のアルバムです。

 

事故が起きたのは、本作からシングルカットされた「Rock the Boat」のプロモーションビデオを撮り終えた直後のことでした。

 

『ONE IN A MILLION』に続いて昨年9月にストリーミング解禁された『AALIYAH』も、米iTunesで1位を獲得しています。

■AALIYAH 『I CARE 4 U』

AALIYAH 『I CARE 4 U』 2LP (0146091ERE) / UK / 2003

アリーヤが亡くなった翌年(2002年)12月にリリースされたコンピレーションアルバム。アナログ盤は2003年に発売されました。

 

本作に収録された6曲の未発表曲が素晴らしく、彼女が亡くなる前にリリースされなかったことが悔やまれます。

 

 

なお、今年の春に上記3タイトルと、2005年に発表されたコンピレーションアルバム『ULTIMATE AALIYAH』のアナログ・リイシューが決定。現代のR&Bサウンドに多大な影響を及ぼしたアリーヤの革新的な作品が、多くの若いリスナーに届くことを切に願います。

ヒップホップ/R&Bの人気LP

■2PAC 『ME AGAINST THE WORLD』

2PAC 『ME AGAINST THE WORLD』 2LP (92399-1) / US / 1995

2パックことトゥパック・アマル・シャクールが1995年にリリースした3rdアルバム『ME AGAINST THE WORLD』。

 

翌年発表された『ALL EYEZ ON ME』と共に2パックの代表作に挙げられることの多い本作は、発売から27年経った今なお、高い人気を誇る名盤です。

 

1996年9月7日、親友のマイク・タイソンがブルース・セルドンを秒殺したWBA世界ヘビー級タイトルマッチを観戦した直後に4発の銃弾をあびた2パックは、6日後(1996年9月13日)に死去。

 

彼がこの世を去ってからも未発表音源をもとに制作されたアルバムが何度もリリースされ、いずれも大ヒットを記録しています。

■THE NOTORIOUS B.I.G. 『READY TO DIE』

THE NOTORIOUS B.I.G. 『READY TO DIE』 LP (78612-73000-1) / US / 1994

ビギー・スモールズの愛称で知られるノトーリアス・B.I.G.(本名クリストファー・ジョージ・レイトア・ウォレス)の1stアルバム『READY TO DIE』(1994年)。

 

LAで行われたヒップホップ専門誌『Vibe』主催のパーティーに出席したビギーが、帰途に銃撃を受けて亡くなったのは、1997年3月9日。2ndアルバム『LIFE AFTER DEATH』が発売されたのが同年3月25日なので、本作はビギーが生前発表した唯一のフルアルバムということになります。

 

ビギーが暗殺されたのは、2パックが凶弾に倒れた半年後。アメリカ東海岸と西海岸の人気ラッパーが命を落としたふたつの銃撃事件は、現在も未解決のままです。

■D’ANGELO 『BROWN SUGAR』

D’ANGELO 『BROWN SUGAR』 LP (CTLP 46) / UK / 1995

1995年に発表されたディアンジェロの1stアルバム。プログラミングが主流だった90年代R&Bシーンに衝撃を与えた名盤です。

 

『BROWN SUGAR』がリリースされた翌年(1996年)にはマックスウェルやエリック・ベネイが、1997年にはエリカ・バドゥがデビュー。生演奏を重視したブラックミュージックの傑作が数多く発表されました。

日本では彼等の音楽を「ニュー・クラシック・ソウル」と呼んでいましたね。「ネオ・ソウル」という言葉が使われるようになる前の時代です。

■D’ANGELO 『VOODOO』

D’ANGELO 『VOODOO』 2LP (7243 8 48499 1 7) / US / 2000

2000年に発表された2ndアルバム『VOODOO』。言わずと知れた歴史的名盤です。

 

世界中の音楽ファンや評論家から「ディアンジェロの最高傑作」と称賛される大傑作ですが、本作が発売された直後には『BROWN SUGAR』のようなサウンドを期待していたリスナーから落胆の声を聞かされたことも多々ありました。

 

『VOODOO』のアナログ盤はこれまでに何度か再発されていて、私も2012年にゲートフォールド(見開きジャケット)仕様で再発されたUS盤2LP(MCR 902)を購入しましたが、オリジナル盤とは各面に収録されている内容が微妙に異なります。

 

オリジナル盤のC面冒頭に入っているインタールードが、再発盤はB面の最後に入っていたり、D面の頭に入っているインタールードがC面の最後に入っていたり。それらのインタールードがフェードイン/フェードアウト処理されているオリジナル盤に対し、再発盤はブツっと音が途切れていて・・・。

 

他の再発盤やUKオリジナル盤を所有していないので、それらと比較することはできませんが、個人的にはUSオリジナル盤で聴きたい作品です。

2000年代の人気作品

2000年以降に制作されたLPの人気盤は、90年代から活躍していたアリーヤやディアンジェロの作品ばかりではありません。今世紀に入ってから登場したアーティストのLPも、高値で取引されるものが数多く存在します。

コンディションの良い人気アーティストのLPを手放す際には、MIONアップサイクルにご連絡ください!

■MARIA RITA 『MARIA RITA』

MARIA RITA 『MARIA RITA』 2LP (5050467018617) / Brazil / 2003

100万枚以上売り上げ、ラテン・グラミー賞で最優秀新人賞と最優秀MPBアルバム賞を獲得したマリア・ヒタのデビューアルバム。

(MPBはムジカ・ポプラール・ブラジレイラの略で、ブラジリアン・ポピュラー・ミュージックという意味。エミ・ペー・ベーと読みます)

 

マリア・ヒタは、60~70年代にかけて一世風靡したブラジル人女性シンガーのエリス・レジーナと、ピアニストのセザル・カマルゴ・マリアーノの愛娘です。

 

Discogsによると、本作のアナログ盤が生産されたのは1000枚で、一般流通されたのは500枚のみ。残りの500枚はジャーナリスト向けとのこと。発売当時に入手できてラッキーでした。

■BUILD AN ARK 『PEACE WITH EVERY STEP』

BUILD AN ARK 『PEACE WITH EVERY STEP』 2LP (KS 005 LP) / Netherlands / 2004

LAアンダーグラウンド・シーンの最重要人物として知られるカルロス・ニーニョを中心に、2001年に結成されたBUILD AN ARKの1stアルバム『PEACE WITH EVERY STEP』。サイン入りです。

 

伝説のジャズ・レーベルTribe Recordsを主宰するトロンボーン奏者のフィル・ラネリンや、Nimbus Recordsでリーダー作を発表していた鍵盤奏者のネイト・モーガンといった伝説のミュージシャンが参加メンバーに名を連ねていたので、発売直後から60~70年代のブラックジャズを愛好するマニアの間で話題になっていました。

 

未聴の方は、ファラオ・サンダースのカバー「You’ve Gotta Have Freedom」をぜひ!

■CORINNE BAILEY RAE 『CORINNE BAILEY RAE』

CORINNE BAILEY RAE 『CORINNE BAILEY RAE』 LP (009463 54117 1 3) / UK / 2006

コリーヌ・ベイリー・レイが2006年に発表した1stアルバム。

 

そのオーガニックなサウンドは世界中の音楽ファンを魅了し、本国イギリスのみならずアメリカでも大ヒット。英国レコード産業協会でトリプル・プラチナ、アメリカレコード協会でもプラチナディスクに認定されています。

 

昨年(2021年)、リイシューLPが発売されました。オリジナル盤LPとはジャケットのデザインが異なるので、コレクターの皆さまはそちらもゲットしてください。

 

 

 

執筆:五辺宏明

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