ルパン、ジブリ、AKIRA! ~アニメレコードの人気作品

今や音楽ファンの間ですっかり定着したアナログレコード。国内のリリースタイトルも増え、新譜はもちろん、旧譜も続々と再発されています。

 

ロックやジャズ、ソウル、レゲエ、ヒップホップといったさまざまなジャンルの名盤と共に復刻されているアニメのサントラ盤も大人気。

 

2018年発売の『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』『となりのトトロ』の復刻からはじまり、今年の4月に完結したスタジオジブリレコーズの「“宮崎駿・高畑勲 監督&音楽 久石譲”作品アナログ盤シリーズ」は追加プレスが相次ぎ、累計10万枚を突破しています。

 

久石譲 『天空の城ラピュタ サウンドトラック盤 ~飛行石の謎~』 Japan press LP (25AGL-3025) - 1986

初のスタジオジブリ制作映画として1986年に劇場公開された『天空の城ラピュタ』のサントラ盤。

 

こちらは公開当時にアニメージュレコードから発売されたLPで、見開きジャケットを広げると複製セル画が付いています。

ラピュタやナウシカと共に高い人気を誇る宮崎作品といえば、1979年に公開された『ルパン三世 カリオストロの城』。宮崎駿の映画初監督作品です。

 

『ルパン三世』のアニメ化50周年を記念して2021年10月1日より期間限定でリバイバル上映されたことも記憶に新しい『カリオストロの城』が、ルパンファンや宮崎ファンのみならず幅広い層から支持を受ける名作であることは、皆さんご存じの通り。

 

大野雄二が手掛けた劇伴も秀逸です。

大野雄二 『ルパン三世 カリオストロの城 オリジナル・サウンド・トラック BGM集』 Japan press LP (CX-7090) - 1983

ということで今回は、放送開始から50年経った今なお絶大な人気を誇る国民的アニメ作品『ルパン三世』のレコードを中心に、優れたアニメのサントラ盤を紹介させていただきます。

 

 

※作品のタイトルは、各レコードに記載されているものを採用しております。「オリジナル・サウンドトラック」「オリジナル・サウンド・トラック」のように表記が統一されていないケースがありますが、ご容赦ください。

目次

テレビ放送50周年を迎えたルパン三世のレコード

■1stシリーズのシングル盤

チャーリー・コーセー 『ルパン三世』 Japan press 7” (KU-620) - 1971

個人的に思い入れが強いのは、1stシリーズ(特に初期)。ハードボイルドなストーリーと、山下毅雄が手掛けたクールなサウンドが最高です。

こちらは、1stシリーズ放送当時に発売されたシングル盤。A面にエンディングテーマ、B面にオープニングテーマが収録されています。

 

このオープニングテーマが放送で使用されたのは、わずか4回(第1~3、9話)。それにもかかわらず「この曲こそが1stシリーズのオープニングテーマ」と考えるファンも多いことでしょう。

 

しかし、残念ながらこのシングル盤に収録されたオープニングテーマは、テレビで使用されたものとは別テイク。アクの強いテレビ版とは歌い方が全く異なります。子供向けということなのかもしれませんが、カタカナ発音で歌われているんですよね・・・。

 

なお、ユニオンレコードから発売されたこのシングル盤のオープニングテーマは「ルパン三世その2」と題されていますが、朝日ソノラマから発売されたソノシートのオープニングテーマには「ルパン三世その1」という曲名が付けられているとのこと。

まぎらわしいので、以下は便宜上「第1期オープニングテーマ」と記載いたします。

 

■初期作品再録アルバム

山下毅雄 『テレビ・オリジナルBGMコレクション ルパン三世 ~山下毅雄・オリジナルスコアによる「ルパン三世」の世界』 Japan press LP(CQ-7040) - 1980

日本コロムビアの「テレビ・オリジナルBGMコレクション」シリーズの一環として再録された初期作品音楽集。1stシリーズ放送時の音源は、マスターテープが紛失してしまったそうです。

 

音楽的に優れた作品ですが、アレンジが全く違うので肩すかしをくらうかも。

 

■不可能といわれた1stシリーズ劇中音楽のアルバム化が実現

山下毅雄 『MUSIC FILE EX. LUPIN THE 3rd ’71 ME TRACKS』 Japan press LP (VPJD-31003) - 1999

マスターテープが紛失してしまったことからレコード・CD化は不可能といわれてきた1stシリーズの劇中音楽を、MEテープ(セリフを入れる前段階の音楽と効果音のみ収録された音素材)から復元編集してアルバム化した『MUSIC FILE EX. LUPIN THE 3rd ’71 ME TRACKS』。本作のリリースが発表されたときは興奮しました。

 

ただ、第1期オープニングテーマは未収録なんですよね。

 

■第1期オープニングテーマを収録したドラマ編LP

山下毅雄 『ルパン三世 ドラマ編』 Japan press LP (CZ-7032) - 1980

第15話「ルパンを捕まえてヨーロッパへ行こう」と、第21話「ジャジャ馬娘を助けだせ!」の音声のみを収録したドラマ編のレコードです。ビデオデッキが一般家庭に普及していなかった時代に制作されたものですね。

 

A面に第15話、B面に第21話がオープニングテーマからエンディングテーマまで(第15話の次回予告のみカットして)収録されているのですが、A面の冒頭になんと第1期オープニングテーマが!

 

side-A

・第1期オープニングテーマ(第1~3、9話)

・第2期オープニングテーマ(第4~8、10~15話)

・第15話ドラマ本編

・エンディングテーマ

 

side-B

・第3期オープニングテーマ:ナレーション入り(第16話)

・第3期オープニングテーマ:ナレーションなし(第17~23話)

・第21話ドラマ本編

・エンディングテーマ

 

B面のトップには、第16話で使用された銭形警部(納谷悟朗)のナレーションが入った第3期オープニングテーマが収録されています。

 

1stシリーズ全23話で使用された3種類のオープニングテーマを聴くことができるので、ルパンファンは必携!

 

■大野雄二、初のルパンOST

大野雄二 『ORIGINAL SOUNDTRACK from LUPIN III』 Japan press LP (YP-7071-AX) - 1978

誰もが知る「ルパン三世のテーマ」や「ルパン三世 愛のテーマ」を収録した2ndシリーズのサウンドトラック第一弾。

現在までルパン音楽を担当する大野雄二が手掛けた初のサントラ盤です。

 

我が家のLPは大野雄二のサイン入り!

■世代を超えて愛される「ルパン三世のテーマ」

ユー&エクスプロージョン・バンド 『ルパン三世 オリジナル・サウンドトラック』 Japan press 7” (YX-95-AX) - 1977

『ORIGINAL SOUNDTRACK from LUPIN III』収録の「ルパン三世のテーマ」には、登場人物のナレーションが入っているので、ナレーションなしの7インチも押さえておきましょう。

 

■歌入り版の7インチ

ピートマック・ジュニア / 水木一郎 『ルパン三世のテーマ / ルパン三世 愛のテーマ』 Japan press 7” (CK-511) - 1978

ピートマック・ジュニアが歌う「ルパン三世のテーマ」と、水木一郎が歌う「ルパン三世 愛のテーマ」をカップリングした7インチ。2ndシリーズの第27話から第51話に使用されたヴォーカル版です。

 

どちらもインストゥルメンタルのイメージが強い曲ですが、2曲とも良いので聴き逃し厳禁。

 

■峰不二子のテーマ「ラヴ・スコール」

ユー&エクスプロージョン・バンド / サンドラ・ホーン 『ルパン三世’79 / ラヴ・スコール』 Japan press 7” (YK-111-AX) - 1978

A面に収録された「ルパン三世のテーマ」のディスコ・バージョンもさることながら、やはりサンドラ・ホーンことサンディーが歌うB面の「ラヴ・スコール」が最高です。

 

2021年10月31日に代々木公園で行われた『earth garden “秋” 2021』にサンディーが出演。「ラヴ・スコール」を生で聴くことができました。感無量です。

 

■名曲揃いのヒット・コレクション

大野雄二 『ルパン三世 -ヒット・コレクション-』 Japan press LP (CX-7073) - 1982

2ndシリーズの楽曲や、『カリオストロの城』の主題歌「炎のたからもの」を収録したベストアルバム。

 

「ルパンのレコードってたくさんあるから、どのアルバムから聴いたら良いのやら・・・」と思っている方は、こちらをぜひ。

 

■人気リミックス・シリーズ第一弾

V.A. 『PUNCH THE MONKEY! - Lupin the 3rd; The 30th Anniversary Remixes』 Japan press 2LP (COJA-9192~3) - 1998

小西康陽が主宰するreadymade recordsからリリースされたリミックス・シリーズの1作目。

松浦俊夫、須永辰緒、田中知之といったそうそうたる顔ぶれが集結した本作は、大ヒットを記録しています。

2021年11月19日公開の「特殊ジャケット! ~遊びごころ満載のレコードジャケット」という記事で、このシリーズの第2作を紹介しておりますので、そちらもご覧ください。

https://kaitori.mion.tokyo/column/record-jacket-gimmick/

■MURO Remixを収録したコラボ7インチ

Yuji Ohno & Lupintic Six (MURO Remix) 『Lupin Trois 2018』 Japan press 7” (TYOR-8014) - 2018

人気DJのMUROが手掛けた2曲のリミックスを収録した7インチ。ルパン、伊勢丹、TOKYO RECORDS、人気ブランドAPPLEBUMのコラボアイテムです。

 

伊勢丹新宿店で行われた『ISETAN×ルパン三世 #ルパンの夏祭り』で先行販売され、即完売(私も並びました)。

 

後に一般発売されましたが、今となっては入手困難な1枚となってしまいました。手放す際には、MIONアップサイクルにご連絡ください!

 

大野雄二が手掛けたキャプテンフューチャーの音楽集

大野雄二&ギャラクシー 『キャプテンフューチャー ~音楽集~』 Japan press LP (CQ-7028) - 1979

SF作家のエドモンド・ハミルトンのスペースオペラ・シリーズをアニメ化した『キャプテンフューチャー』(1978~1979年)のサントラ盤。大野雄二のサイン入りです。

2ndシリーズのルパンサウンドが好きな方は、こちらもきっと気に入るはず。

 

このLPに収録された主題歌の「夢の舟乗り」を歌っているのは、ゴダイゴのタケカワユキヒデ。

テレビでタケカワ版が流れたのは第32話から最終話(第52話)で、それ以前はヒデ夕樹が歌うバージョンが使用されていました。

 

ヒデ夕樹のヴォーカルで「夢の舟乗り」を聴きたい方は、7インチを入手してください。

 

ヒデ夕樹 / ピーカブー 『キャプテンフューチャー』 Japan press 7” (SCS-441) - 1978

ルパンに続いて菊地成孔が手掛けたガンダムのサントラ

2ndシリーズ以降のアニメ版ルパンの音楽は大野雄二が担当していますが、例外があります。

 

2012年に放送されたルパンのスピンオフ作品『LUPIN the Third ~峰不二子という女~』の音楽を手掛けたのは、ジャズミュージシャン/プロデューサーの菊地成孔。

 

残念ながら同作のサントラ盤は、CDのみのリリース。素晴らしい作品なのでアナログ盤を出していただきたいところです。

 

菊地成孔が、ルパンの次に手掛けたアニメのサウンドトラックがこちら。

 

菊地成孔 『MOBILE SUIT GUNDAM THUNDERBOLT ORIGINAL SOUNDTRACK』 Japan press LP (VRJ7 1) - 2016

2015年から2016年にかけて全4話構成で制作された『機動戦士ガンダム サンダーボルト』第1シーズンのサントラ盤です。

 

2016年6月に発売された本作には、ジャズピアニストの大西順子が参加。2012年の引退宣言から3年のブランクを経て、2015年から演奏活動を再開した大西順子の復帰作として、音楽ファンから大きな注目を集めました。

 

多くの場合、サントラ盤には劇中のBGMとして使用された楽曲が収められています。しかし、本作がそれらと大きく異なる点は、登場人物が戦闘中に聴いている音楽で構成されているということ。前半は連邦軍のイオ・フレミングが聴いているジャズ、後半にはジオン軍のダリル・ローレンツが聴いているポップスが収録されています。

 

アナログ盤は、有料配信された全4話に新作カットを加えて劇場公開されたディレクターズカット版『機動戦士ガンダム サンダーボルト DECEMBER SKY』の上映館と、サントラ盤発売記念ライブの物販で限定販売されました。ジャケットは、CDと異なる描き下ろしのイラストです。

(2018年12月よりソニー・ミュージックショップで販売開始)

 

ジャケットに書き込まれたサインは、大西順子(左下)、菊地成孔(右上)、A面6曲目の「出撃用」でバスクラリネットを吹く梅津和時(右下)。

 

あしたのジョーのレコード

1967年から1973年にかけて『週刊少年マガジン』に連載されたボクシング漫画『あしたのジョー』。

 

ちばてつや(作画)と共にこの傑作を生み出した原作の高森朝雄こと梶原一騎は『巨人の星』や『タイガーマスク』『空手バカ一代』など多くの人気作を世に送り出した劇画作家です。

 

私が所有する『あしたのジョー』のテレビ主題歌のレコードは『タイガーマスク』とのカップリング盤。

 

V.A.『あしたのジョー / タイガー・マスク』 Japan press 7” (C-18) - 1970

この4曲入り7インチEPに収録されているのは、1970年から1971年にフジテレビ系で放送されたアニメ版第1作のオープニング&エンディングテーマ。

ちなみに、第2作『あしたのジョー2』は日本テレビ系で放送されました(1980~1981年)。

 

1980年には、アニメ版第1作のハイライトとなる力石徹戦までのエピソードを再編した劇場版が公開。同作のサントラ盤は、和モノ・レアグルーヴの名盤として知られています。

 

鈴木邦彦 『あしたのジョー オリジナル・サウンド・トラック盤』 Japan press LP (ORF-5006) - 1980

アイザック・ヘイズの「Shaft」を想起させるA面2曲目の「ジョーと段平の出逢い」を筆頭に、レアグルーヴ・ファンが喜びそうな楽曲が満載。大人になってから劇場版を見返したとき、音楽のカッコ良さに驚きました。

 

銀河鉄道999のレコード

ささきいさお、杉並児童合唱団 『銀河鉄道999』 Japan press 7” (SCS-433) - 1978

1978年から1981年にかけてフジテレビで放送された松本零士の代表作『銀河鉄道999』。最高視聴率22.8%を記録したSFアニメの名作です。

 

青木望 『交響詩 銀河鉄道999 映画オリジナル・サウンドトラック』 Japan press LP (CQ-7025) - 1979

こちらは、1979年に公開された劇場版第1作のサントラ盤。

 

「ガンダーラ」「モンキー・マジック」「ビューティフル・ネーム」と立て続けにヒットを飛ばした人気絶頂のゴダイゴによる主題歌「銀河鉄道999 (THE GALAXY EXPRESS 999)」は、人気テレビ番組『ザ・ベストテン』で1位を獲得。同曲を収録したこのサントラ盤も、オリコンのアルバムチャートで1位を記録しています。

 

『銀河鉄道999』の音楽をイメージする際に、大ヒットした劇場版1作目の主題歌やテレビ版のテーマ曲を思い浮かべる方が多いと思いますが、個人的に最も印象深いのはメアリー・マッグレガーが歌う「SAYONARA」。1981年に公開された2作目の劇場版『さよなら銀河鉄道999 -アンドロメダ終着駅-』の主題歌です。

 

メアリー・マッグレガー 『SAYONARA』 Japan press 7” (CH-101) - 1981

なお、劇場版の1作目と2作目のリバイバル上映が決定。最新上映システムのドルビーシネマ版として2022年1月14日より第1作が、2022年1月21日より第2作が全国7館の劇場にて順次公開するそうです。鮮明な映像と立体音響で蘇る『銀河鉄道999』を劇場でぜひ!

 

ジャパニメーションの金字塔、AKIRA & 攻殻機動隊

■AKIRA

GEINOH YAMASHIROGUMI 『AKIRA SYMPHONIC SUITE』 US press 2LP (MLN1-36804) - 2017

1988年に劇場公開された大友克洋の名作『AKIRA』。公開から30年以上経った今なお、世界中のクリエイターに影響を与え続けるジャパニメーションの金字塔です。

 

芸能山城組の山城祥二が手掛けた『交響曲AKIRA』は、第6回日本アニメ大賞最優秀音楽賞を受賞。ケチャやガムランといった民族音楽や、日本の伝統音楽、電子音楽が融合した独創的なサウンドは、映画と同様に高い評価を得ています。

 

今回掲載したレコードは、2017年にアメリカのMilanというレーベルから発売された再発盤。

本名の大橋力(おおはしつとむ)名義で脳科学者としての顔を持つ山城祥二が、独自の研究をもとにリリースしたハイパーハイレゾ版『交響曲AKIRA 2016』のデジタル音源をベースに制作された2枚組のLPです。

 

発売直後から話題を呼んだこの2LPは、米『Billboard』アナログレコード部門の5位にランク入りするヒットを記録しました。

 

公開当時に発売された国内オリジナル盤(VIH-28339)のジャケットにはキャラクターが描かれていないので、ジャケットを目当てにこちらの再発盤を購入したAKIRAファンも多いのでは?

 

■攻殻機動隊

KENJI KAWAI 『GHOST IN THE SHELL Original Soundtrack』 EU press LP (WRWTFWW017) - 2017

1995年に公開された押井守監督作品『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』。説明不要の名作ですね。

 

海外からも絶大な支持を受ける本作は『AKIRA』と並ぶマスターピース。あの『マトリックス』にも影響を与えたといわれています。

 

川井憲次が手掛けたサントラ盤は、劇場公開時にはCDのみの発売でしたが、2017年にスイスのWe Release Whatever The Fuck We Want Records(WRWTFWW Records)からオフィシャルLPがリリースされました。

 

私が所有しているのは通常盤ですが、初回限定盤には「挿入歌 毎天見一見! (See You Everyday)」を収録した片面プレスの7インチや24ページのブックレット、帯が付属しています。

 

希少な初回限定盤を手放す際には、ぜひMIONアップサイクルにご連絡を!

 

 

 

執筆:五辺宏明

 

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