追悼 PHAROAH SANDERS ~ファラオ・サンダースの名盤をレコードで聴く
2022年9月24日、ジャズ・サックス奏者のファラオ・サンダース(Pharoah Sanders/本名Ferrell Lee Sanders)が81歳でご逝去されました。
60年代半ばにジョン・コルトレーン・グループに抜擢され、ジャズ・ファンから注目を集めたファラオ・サンダースは、コルトレーンの死後も自己名義の作品を発表。
80年代後半以降、クラブ・シーンからの再評価を受け、次世代アーティストとのコラボレーションも実現。亡くなる約1カ月前(2022年8月28日)には、ジャイルス・ピーターソン主催の『We Out Here Festival』に出演し、ご子息のトモキ・サンダース(サックス)との親子共演を果たしています。
今回は、生涯現役ミュージシャンとして活躍したファラオ・サンダースに敬意を表し、彼が世に送り出した名盤の数々を紹介します。貴重なサイン入りのレコードも掲載しておりますので、ぜひご覧ください。
なお、10人以下のミュージシャンによって制作された作品は、参加メンバーの名前も記載しました。
(人数が多い作品まで載せると、読みにくいので)
目次
1964年に録音された1stアルバム
1940年10月13日に米国アーカンソー州リトルロックで生まれたファラオ・サンダースは、オークランドやサンフランシスコでの演奏活動を経て、60年代初頭にニューヨークに移住。サン・ラーやドン・チェリーといった前衛ミュージシャンたちと共演を重ね、1964年9月に初のレコーディングを行いました。ファラオの初リーダー作です。
■PHARAOH SANDERS QUINTET 『PHARAOH SANDERS QUINTET』
PHARAOH SANDERS QUINTET 『PHARAOH SANDERS QUINTET』 LP (BT 5007) / Japan / 1975 Reissue
Pharaoh Sanders (T.sax)
Stan Foster (tp)
Jane Getz (pf)
William Bennett (b)
Marvin Pattillo (dr)
フリージャズの傑作を数多く生み出したESP-Disk’から1965年にリリースされたファラオの1stアルバム。1964年9月10日録音。
私が所有しているのは、1975年に発売された国内盤LPです。『PHARAOH』や『PHARAOH’S FIRST』のタイトルでも発売された本作は、数種類のジャケットが存在しますが、個人的にはこのイラスト・ジャケットが一番好み。
ちなみに、ファラオのスペルが「PHARAOH」とクレジットされています。AとOが逆になっていますね。
ジョン・コルトレーンとの共演作品
■JOHN COLTRANE 『ASCENSION』
JOHN COLTRANE 『ASCENSION』 LP (AS-95) / US / 1966 / Edition I / Stereo
1965年6月28日、11人のミュージシャンによって録音された『ASCENSION』。約40分の集団即興演奏をAB面に分けて収録したアルバムです。
ファラオは、アーチー・シェップ(テナーサックス)やマリオン・ブラウン(アルトサックス)、フレディ・ハバード(トランペット)らと共に『ASCENSION』のセッションに参加。その後、コルトレーンのグループに加入しています。
コルトレーン・マニアの間では周知の事実ですが『ASCENSION』には2つのバージョンが存在します。
今回掲載したLPはエディション1と呼ばれるもので、収録されているのはコルトレーンの意図に反した没テイク(38分31秒)。のちにOKテイク(40分23秒)に差し替えられたエディション2が発売されています。
ちなみにエディション1にはエルヴィン・ジョーンズのドラムソロが入っていますが、エディション2には入っていません。
■JOHN COLTRANE 『MEDITATIONS』
JOHN COLTRANE 『MEDITATIONS』 LP (AS-9110) / US / 1966 / Stereo
John Coltrane (T.sax, perc)
Pharoah Sanders (T.sax, perc)
McCoy Tyner (pf)
Jimmy Garrison (b)
Elvin Jones (dr)
Rashied Ali (dr)
黄金カルテットと呼ばれ、一時代を築いたマッコイ・タイナー(ピアノ)、ジミー・ギャリソン(ベース)、エルヴィン・ジョーンズ(ドラム)とのグループにファラオを迎え入れたコルトレーンは、前衛的な音楽を追求していきます。
さらにドラマーのラシッド・アリを加え、1965年11月23日に録音されたのが『MEDITATIONS』(1966年発表)。
本作のレコーディングを最後に、エルヴィン・ジョーンズとマッコイ・タイナーがバンドを去ります。
■JOHN COLTRANE 『LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD AGAIN!』
JOHN COLTRANE 『LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD AGAIN!』 LP (AS-9124) / US / 1966 / Stereo
John Coltrane (T.sax, S.sax, B.cl)
Pharoah Sanders (T.sax, fl)
Alice Coltrane (pf)
Jimmy Garrison (b)
Rashied Ali (dr)
Emmanuel Rahim (perc)
マッコイ・タイナーの後任ピアニストとして妻のアリスを迎えたコルトレーンが、1966年に発表したライブ・アルバム。同年5月28日に、ニューヨークの名門Village Vanguardで録音された名盤です。
ジャケット写真に姿はありませんが、パーカッショニストのエマニュエル・ラヒムも参加しています。
■JOHN COLTRANE 『COLTRANE IN JAPAN』
JOHN COLTRANE 『COLTRANE IN JAPAN』 3LP (IMR-9036C) / Japan / 1973
John Coltrane (T.sax, S.sax, etc.)
Pharoah Sanders (T.sax, A.sax, etc.)
Alice Coltrane (pf)
Jimmy Garrison (b)
Rashied Ali (dr)
コルトレーンが亡くなる1年前に実現した初来日公演に、ファラオもメンバーの一員として同行しています。
東芝音楽工業から発売された『COLTRANE IN JAPAN』は、1966年7月22日に新宿厚生年金会館で行われたツアー最終日の模様を収めた3枚組LP(3枚目は片面プレス)。ラジオ放送用に録音された音源を、1973年に商品化したものです。
2時間10分の熱演を完全収録。未聴の方はぜひ。
60年代後半から70年代に発表されたリーダー作
■PHAROAH SANDERS 『TAUHID』
PHAROAH SANDERS 『TAUHID』 LP (AS-9138) / US / 1968 Reissue / Stereo
Pharoah Sanders (T.sax, A.sax, fl, piccolo, vo)
Sonny Sharrock (g)
Dave Burrell (pf)
Henry Grimes (b)
Roger Blank (dr)
Nat Bettis (perc)
1967年にImpulse! Recordsからリリースされた2枚目のリーダー作『TAUHID』。録音されたのは1966年11月15日。激しさと美しさを兼ね備えた名盤です。
A面を占める16分超えの「Upper Egypt & Lower Egypt」は、ファラの代表曲のひとつ。ピアノのリフが印象的な後半部分が鳥肌モノです。
世界最大の音楽データベースサイトとして知られるDiscogsによると、我が家の『TAUHID』は1968年発売のリイシュー盤のようですね。Impulse! RecordsのロゴとABC Recordsのロゴが同じ虹色の境界線で囲まれているタイプの赤黒ラベルなので(オリジナル盤はオレンジ・ラベル)。
■PHAROAH SANDERS 『IZIPHO ZAM (MY GIFTS)』
PHAROAH SANDERS 『IZIPHO ZAM (MY GIFTS)』 LP (SES-19733) / US / 1973
1973年にStrata-East Recordsから発表された『IZIPHO ZAM (MY GIFTS)』。
本作がレコーディングされたのは、1969年1月14日。クリフォード・ジョーダンのレーベルから発売する予定で録音されるも、リリースには至らず、1973年まで日の目を見なかった作品です。
レオン・トーマスのヨーデル唱法が冴えわたる「Prince of Peace」は、GALLIANOにカバーされたことで知られる人気曲。のちにImpulse! Recordsでも「Hum-Allah-Hum-Allah-Hum-Allah」と曲名を変えて再録されています。
■PHAROAH SANDERS 『KARMA』
PHAROAH SANDERS 『KARMA』 LP (AS-9181) / US / 1971 Reissue
1969年5月に発表された『KARMA』(同年2月録音)。レオン・トーマスやロニー・リストン・スミスらと共に生み出された歴史的名盤です。
32分に及ぶ大作「The Creator Has a Master Plan」を収録した本作は、ファラオ最大のヒットを記録。音楽ジャーナリストのアシュリー・カーンが2006年に上梓した『インパルス・レコード物語』(日本語版は2012年発行)によると、レオン・トーマスのヨーデル唱法が人気を集め、ロックのラジオ番組でもプレイされていたそうです。
ちなみに、オリジナル盤はジャケットの表面がラミネート加工されていますが、我が家のLPは1971年に出たリイシュー盤なので加工なし。
■PHAROAH SANDERS 『JEWELS OF THOUGHT』
PHAROAH SANDERS 『JEWELS OF THOUGHT』 LP (AS-9190) / US / 1970
Pharoah Sanders (T.sax, fl, perc, etc.)
Lonnie Liston Smith (pf, perc, etc.)
Cecil McBee (b, perc)
Richard Davis (b, perc)
Idris Muhammad (dr, perc)
Roy Haynes (dr)
Leon Thomas (vo, perc)
『IZIPHO ZAM (MY GIFTS)』セッションの9カ月後(1969年10月20日)に録音された『JEWELS OF THOUGHT』。前述した「Hum-Allah-Hum-Allah-Hum-Allah」を収録したアルバムです。
本作がリリースされたのは1970年。「Prince of Peace」を収録した『IZIPHO ZAM (MY GIFTS)』が発売されたのが1973年なので、再録版である「Hum-Allah-Hum-Allah-Hum-Allah」の方が先に発表されたことになりますね。
■PHAROAH SANDERS 『THEMBI』
PHAROAH SANDERS 『THEMBI』 LP (AS-9206 / SMAS-94261) / US / 1971 / Club Edition
1971年に発表された『THEMBI』。1970年11月25日と1971年1月12日に録音された音源で構成された作品です。
本作で大きな役割を担うのが、鍵盤奏者のロニー・リストン・スミス。のちに『EXPANSIONS』をはじめ、エレクトリック・ジャズファンクの傑作を数多く輩出するスミスが、初めてエレクトリック・ピアノに触れたのが1970年11月25日のセッションで、そのときに生まれたのが「Astral Traveling」。のちに自身の1stアルバムでも再演している名曲です。
今回掲載したLPは、Capitol Recordsが制作したクラブ・エディションと呼ばれる会員制通販用のレコード。ラベルの下部に「Mfd. by Capitol Records, Inc.」と書かれています。
■PHAROAH SANDERS 『VILLAGE OF THE PHAROAHS』
PHAROAH SANDERS 『VILLAGE OF THE PHAROAHS』 LP (AS-9254) / US / 1973
1973年にリリースされた『VILLAGE OF THE PHAROAHS』。時期が異なる3つのセッション音源で構成されている作品です。
A面1~4曲目とB面3曲目は、1973年9月14日録音。タンブーラや尺八、アフリカの打楽器を取り入れた3部構成のタイトル曲(A1~3)が圧巻です。
B面1曲目の「Mansion Worlds」は、1971年12月8日録音。本作の中でファラオのファンに一番人気があるのは、この曲かも。
B面2曲目の「Memories of Lee Morgan」は、1972年11月22日録音。同年2月に非業の死を遂げたトランペッターのリー・モーガンに捧げた名曲です。
■PHAROAH SANDERS 『WISDOM THROUGH MUSIC』
PHAROAH SANDERS 『WISDOM THROUGH MUSIC』 LP (AS-9233) / US / 1973
Pharoah Sanders (T.sax, S.sax, fl, vo)
James Branch (fl)
Joseph Bonner (pf)
Cecil McBee (b)
Norman Connors (dr)
Babadal Roy (perc)
James Mtume (perc)
Lawrence Killian (perc)
1973年にリリースされた『WISDOM THROUGH MUSIC』。
オリジナル盤LPに録音日がクレジットされていないので、調べてみたところ、2007年に出た国内盤CDの帯に1972年録音と記載されていました(1973年録音説もあるようです)。
本作の目玉は、いとうせいこう「噂だけの世紀末」(ヤン富田プロデュース)のサンプリングソースとしても知られる「Love Is Everywhere」。セシル・マクビーのベースによるイントロを聴くだけで胸が高鳴ります。
■PHAROAH SANDERS 『LOVE IN US ALL』
PHAROAH SANDERS 『LOVE IN US ALL』 LP (ASD-9280) / US / 1974
1974年にリリースされたImpulse! Records最終作『LOVE IN US ALL』。
A面に「Love Is Everywhere」の長尺版、B面に師匠であるコルトレーンに捧げた「To John」を収録した2曲入りで、録音メンバーは『WISDOM THROUGH MUSIC』と同じ。
リリカルなジョー・ボナーのピアノと、穏やかなファラオのサックスが心に沁みる後半パートを加えた2部構成の「Love Is Everywhere」は、世界中の音楽ファンに愛される至極の名曲です。
■PHAROAH SANDERS 『PHAROAH』
PHAROAH SANDERS 『PHAROAH』 LP (IN-1027) / US / 1977 Repress
Pharoah Sanders (T.sax, perc, vo)
Lawrence Killian (perc)
Steve Neil (b)
Munoz (g)
Jiggs Chase (org)
Greg Bandy (dr)
Bedria Sanders (harmonium)
1977年にIndia Navigationから発表された『PHAROAH』。
録音されたのは、1976年の8月と9月。A面に「Harvest Time」、B面に「Love Will Find a Way」と「Memories of Edith Johnson」を収録した人気盤です。
個人的にはファラオの最高傑作だと思っていて、特に「Love Will Find a Way」は一番好きな曲。素朴なファラオのヴォーカルと激しく美しいサックスが感動的です。
私が所有しているのは、オリジナル盤と同じ年に発売されたリプレス盤。ラベルにIndia Navigationのロゴが入っています。
青ジャケと茶ジャケの2種類が存在するオリジナル盤はもちろん、このリプレス盤も入手困難で、1978年に発売された国内盤もあまり見かけません。2020年に出たLPはアンオフィシャルのようですね。
■PHAROAH SANDERS 『LOVE WILL FIND A WAY』
PHAROAH SANDERS 『LOVE WILL FIND A WAY』 LP (AB 4161) / US / 1978
1978年にArista Recordsから発売された『LOVE WILL FIND A WAY』(1977年録音)。
スピリチュアルな作品を発表してきたファラオが、メジャーレーベルで制作したスムーズジャズ作品。女性シンガーのフィリス・ハイマンが3曲参加しています。
本作は商業的な成功を収めていますが、ファラオの作品として聴くと肩透かしを食らうかも。
■PHAROAH SANDERS & NORMAN CONNORS 『BEYOND A DREAM』
PHAROAH SANDERS & NORMAN CONNORS 『BEYOND A DREAM』 LP (AN 3021) / US / 1981
Arista Records傘下のArista Novusから1981年に発売された『BEYOND A DREAM』。ファラオとノーマン・コナーズの双頭名義で発表されたライブ・アルバムです。
『Montreux Jazz Festival 1978』に出演した際のパフォーマンスを収録(1978年7月22日録音)。ファラオの代表曲として知られる「You’ve Got to Have Freedom」の原曲「Casino Latino」を聴くことができます。
80年代以降のリーダー作
■PHAROAH SANDERS 『JOURNEY TO THE ONE』
PHAROAH SANDERS 『JOURNEY TO THE ONE』 2LP (TR108/109) / US / 1980
Arista Recordsとの契約を終えたファラオが、カリフォルニアのTheresa Recordsから1980年に発表した『JOURNEY TO THE ONE』。ファラオ初の2枚組作品です(録音されたのは1979年12月)。
80年代後半以降にアシッドジャズやレアグルーヴ界隈で再評価された「You’ve Got to Have Freedom」を収録した重要作。
無数のカバーが存在し、サンプリングソースとしても人気の高い「You’ve Got to Have Freedom」は、世代を超えたリスナーから愛される稀代の名曲です。
■PHAROAH SANDERS 『REJOICE』
PHAROAH SANDERS 『REJOICE』 2LP (TR112/113) / US / 1981
1981年に発表されたTheresa Records第2弾『REJOICE』も、前作と同様に2枚組の大作(1981年録音)。かつてコルトレーン・グループで共演していたエルヴィン・ジョーンズが、タイトル曲の「Rejoice」でドラムを叩いています。
ヴァイブラフォン奏者のボビー・ハッチャーソンが参加していることも、本作の注目ポイントですね。
女性コーラスが印象的な「Origin」は、その後の作品でも再演されています。
■PHAROAH SANDERS 『SHUKURU』
PHAROAH SANDERS 『SHUKURU』 LP (TR121) / US / 1985
Pharoah Sanders (T.sax, vo)
William Henderson (syn)
Ray Drummond (b)
Idris Muhammad (dr)
Leon Thomas (vo)
タイトル曲やレオン・トーマスが歌う「Sun Song」が人気の『SHUKURU』。Theresa Records第5弾として1985年に発売されていますが、1981年に録音された音源です。
昨年(2022年)Pure Pleasure Recordsから、初アナログ化となる「For Big George」を加えたリマスター盤LPが再発。1987年にCD化された際にボーナストラックとして収録された曲です。
■PHAROAH SANDERS 『LIVE...』
PHAROAH SANDERS 『LIVE…』 LP (TR 116) / US / 1982
Pharoah Sanders (T.sax, vo)
John Hicks (pf)
Walter Booker (b)
Idris Muhammad (dr)
1982年にリリースされた『LIVE…』。1981年4月にLAとサンタクルーズで録音された音源で構成されたライブ盤です。
「フリーダム!」と叫んで、激しくサックスを吹きまくるファラオと、ジョン・ヒックスのピアノが強烈な「You’ve Got to Have Freedom」は、本作のハイライト。
このレコードを聴くたびに、ブルーノート東京で「You’ve Got to Have Freedom」を熱演するファラオの姿が脳裏によみがえります。
■PHAROAH SANDERS 『AFRICA』
PHAROAH SANDERS 『AFRICA』 LP (SJP 253) / Netherlands / 1987
Pharoah Sanders (T.sax)
John Hicks (pf)
Curtis Lundy (b)
Idris Muhammad (dr)
1987年にオランダのTimeless Recordsからリリースされた『AFRICA』。
録音されたのは1987年3月11日。「You’ve Got to Have Freedom」や「Origin」、コルトレーンの名曲「Naima」を収録した人気盤です。
今回掲載したオリジナル盤LPは、CDよりも2曲少ない6曲入り。しかし、2019年以降に2枚組仕様で再発されたアナログ盤には、CDと同数の8曲が収録されています。
■PHAROAH SANDERS 『OH LORD, LET ME DO NO WRONG』
PHAROAH SANDERS 『OH LORD, LET ME DO NO WRONG』 LP (FW40952) / US / 1987
Pharoah Sanders (T.sax)
Donald Smith (E.pf)
William S. Henderson III (pf)
Tarik Shah (b)
Greg Banoy (dr)
Leon Thomas (vo)
1987年に発表された『OH LORD, LET ME DO NO WRONG』(同年7月13日録音)。Impulse! RecordsやFlying Dutchman Recordsで数多くの名盤を制作したプロデューサーのボブ・シールが1983年に設立したDoctor Jazz Recordsからのリリースです。
レゲエのビートを取り入れ、レオン・トーマスのヴォーカルをフィーチャーしたタイトル曲「Oh Lord, Let Me Do No Wrong」が人気です。MONDO GROSSOもカバーしていますね。
なお、ドラマーの名前が「Greg Banoy」とクレジットされていますが、『PHAROAH』に参加しているグレッグ・バンディ(Greg Bandy)と同一人物のようです。
■PHAROAH SANDERS QUARTET 『THE CREATOR HAS A MASTER PLAN』
PHAROAH SANDERS QUARTET 『THE CREATOR HAS A MASTER PLAN』 LP (TKJV-19125) / Japan / 2003
Pharoah Sanders (T.sax)
William Henderson (pf)
Ira Coleman (b)
Joe Farnsworth (dr)
90年代以降、ファラオは名門Verve Recordsや、日本のヴィーナスレコードといったレーベルから作品を発表。
2003年4月23日に東京で録音された『THE CREATOR HAS A MASTER PLAN』は、ヴィーナスレコードが制作したファラオのリーダー作です。
コルトレーンの名演で知られる「I Want to Talk About You」や「It’s Easy to Remember」、モハメド・アリのドキュメンタリー映画『アリ/ザ・グレーテスト』(1977年公開)の主題歌「Greatest Love of All」などを取り上げている本作のハイライトは、やはり「The Creator Has a Master Plan」の再演でしょうね。
サイドメンとして参加した作品
■ALICE COLTRANE featuring PHAROAH SANDERS 『JOURNEY IN SATCHIDANANDA』
ALICE COLTRANE featuring PHAROAH SANDERS 『JOURNEY IN SATCHIDANANDA』 LP (AS 9203) / US / 1971
Alice Coltrane (harp, pf)
Pharoah Sanders (S.sax, perc)
Rashied Ali (dr)
Cecil McBee (b)
Tulsi (tamboura)
Majid Shabazz (bells, tambourine)
Charlie Haden (b)
Vishnu Wood (oud)
亡き夫の遺志を継ぎ、自己名義の作品をコンスタントに制作したアリス・コルトレーンが、1971年に発表した『JOURNEY IN SATCHIDANANDA』。
5曲中4曲が1970年11月8日録音。B面2曲目の「Isis and Osiris」のみ、同年7月4日に録音されたライブ音源です。
ファラオは、アリスがImpulse! Recordsからリリースした1枚目の『A MONASTIC TRIO』(1968年発表)、3枚目『PTAH, THE EL DAOUD』(1970年発表)、そして4枚目となる本作に参加。特にファラオが全面参加した本作は、アリスの代表作として挙げられることが多い名盤です。
■ED KELLY & FRIEND 『ED KELLY & FRIEND』
ED KELLY & FRIEND 『ED KELLY & FRIEND』 LP (TR106) / US / 1979
1979年にTheresa Recordsから発表された『ED KELLY & FRIEND』(1978年録音)。
本作の実質的なリーダーはファラオで、このアルバムに「You’ve Got to Have Freedom」の初演が収録されています。Arista Recordsとの契約が残っていたために「Ed Kelly & Friend」名義でリリースされたようですね。
なお、1993年にCD化された際には「Ed Kelly & Pharoah Sanders」名義で発売されています(ECD 22056-2)。
■BENNY GOLSON 『THIS IS FOR YOU, JOHN』
BENNY GOLSON 『THIS IS FOR YOU, JOHN』 LP (RJL-8092) / Japan / 1984
Benny Golson (T.sax)
Pharoah Sanders (T.sax)
Cedar Walton (pf)
Ron Carter (b)
Jack DeJohnette (dr)
1983年12月20~21日にニューヨークで録音されたベニー・ゴルソンのリーダー作。国内ジャズ・レーベルのベイステイトが制作した作品です。
ベニー・ゴルソンとファラオの2テナー、そしてシダー・ウォルトン、ロン・カーター、ジャック・ディジョネット。超一流ミュージシャンばかりですね。
リーダーはゴルソンですが『REJOICE』や『AFRICA』にも収録された「Origin」が取り上げられているので、ファラオのファンも聴き逃せません。
■ART DAVIS QUARTET 『LIFE』
ART DAVIS QUARTET 『LIFE』 LP (SN 1143) / Italy / 1986
Art Davis (b)
Pharoah Sanders (T.sax)
John Hicks (pf)
Idris Muhammad (dr)
ベーシストのアート・デイヴィスが1986年に発表したリーダー作『LIFE』(1985年10月5日録音)。
イタリアのSoul Noteが制作したアルバムですが、レコーディングは『THIS IS FOR YOU, JOHN』と同様にニューヨークで行われています。
ファラオとアート・デイヴィスは『REJOICE』やコルトレーンの『ASCENSION』で共演済み。ジョン・ヒックスとアイドリス・ムハマッドも、ファラオと何度も共演しているプレイヤーです。
■THE ALEX BLAKE QUINTET featuring PHAROAH SANDERS 『NOW IS THE TIME (LIVE AT THE KNITTING FACTORY)』
THE ALEX BLAKE QUINTET featuring PHAROAH SANDERS 『NOW IS THE TIME (LIVE AT THE KNITTING FACTORY)』 LP (bc-030) / US / 2000
Alex Blake (b, perc, vo)
Pharoah Sanders (T.sax)
John Hicks (pf)
Victor Jones (dr)
Neil Clark (perc)
2000年に発表されたアレックス・ブレイクのリーダー作。エレクトロニカ/ポストロック・シーンで活躍するアダム・ピアース(MICE PARADE、THE DYLAN GROUP)が主宰するBubble Core Recordsからリリースされた作品です。
1999年12月6日に録音されたライブ・アルバムで、ファラオが全面参加。アレックス・ブレイクは『LOVE WILL FIND A WAY』や『BEYOND A DREAM』に参加しているベーシストです。
Theresa Records時代のファラオ作品が好きな方は、ぜひ聴いてみてください。
■SLEEP WALKER 『The Voyage / Into the Sun』
SLEEP WALKER 『The Voyage / Into the Sun』12” (ESP-010) / Japan / 2004
中村雅人 (T.sax, S.sax)
吉澤はじめ (pf, E.pf)
杉本智和 (b)
藤井伸昭 (dr)
Pharoah Sanders (T.sax)
Bembe Segue (vo)
元MONDO GROSSOの中村雅人と吉澤はじめを中心に結成されたSLEEP WALKERが、2004年に発表した12インチ。SLEEP WALKERのサイン入りです。
ファラオはA面の「The Voyage」に参加。ベンベ・セグエを迎えたB面「Into the Sun」と共に国内外のクラブ・シーンで高い評価を得ています。
両曲を収録したSLEEP WALKERの2ndアルバム『The Voyage』がリリースされた2006年には、ダンスミュージックを中心とした大型フェス『メタモルフォーゼ』で、ファラオとSLEEP WALKERの共演ライブが実現。「The Voyage」と「You’ve Got to Have Freedom」を披露しています。
遺作となった名盤『PROMISES』
■FLOATING POINTS, PHAROAH SANDERS & THE LONDON SYMPHONY ORCHESTRA 『PROMISES』
FLOATING POINTS, PHAROAH SANDERS & THE LONDON SYMPHONY ORCHESTRA 『PROMISES』 LP (PLP-7135) / Japan / 2021
人気DJ/プロデューサーのフローティング・ポインツことサム・シェパードと、ロンドン交響楽団と共に制作された『PROMISES』の国内流通仕様LP。輸入盤に帯を付けて発売されたものです。
2021年3月にデヴィッド・バーン主宰レーベルのLuaka Bopから発表された『PROMISES』は、各方面から称賛を受けました。
結果的に本作が、ファラオの遺作となってしまいました。謹んで哀悼の意を表します。安らかに。
執筆:五辺宏明