小泉今日子の軌跡をレコードでふり返る
昨年(2022年)デビュー40周年を迎えた小泉今日子。
映画やドラマ、舞台で活躍する女優であり、演劇や音楽イベントなどの制作会社として2015年に設立された株式会社明後日(あさって)の代表取締役を務める彼女が、歌手として31年ぶりとなる全国ホールツアーを開催(2022年2月18日~3月30日)。
神奈川・相模女子大学グリーンホールを皮切りに、全15公演行われた『小泉今日子 TOUR 2022 KKPP (Kyoko Koizumi Pop Party)』は大盛況のうちに幕を閉じ、デビュー記念日である2022年3月21日に行われた東京・中野サンプラザ公演の模様を収録したCDやBlu-ray、DVDが同年9月21日に発売されています。
スタジオ・ライブやインタビューで構成されたNHKの特番も、大きな反響を呼びました。
ということで今回は、小泉今日子の音楽活動をレコードでふり返ってみることにしました。80年代のヒット曲や、クラブミュージックの要素を取り入れた90年代のアナログ盤などを紹介していきますので、どうぞお付き合いください。
目次
トップアイドルとして活躍していた80年代のヒット曲
■私の16才
小泉今日子 『私の16才』 7” (SV-7200) / Japan / 1982
1982年3月21日に発売された小泉今日子の記念すべきデビュー・シングル「私の16才」。
原曲は、森まどかの2ndシングル「ねえ・ねえ・ねえ」(1979年)。曲名こそ異なりますが、歌詞もアレンジも忠実にカバーしています。
■まっ赤な女の子
小泉今日子 『まっ赤な女の子』 7” (SV-7301) / Japan / 1983
1983年5月5日に発売された5枚目のシングル「まっ赤な女の子」。
小泉今日子がブレイクするきっかけとなったシングルであり、初めて主演を務めたフジテレビ系の単発ドラマ『あんみつ姫』(1983年5月23日放送)の主題歌でもある重要な曲です。
■艶姿ナミダ娘
小泉今日子 『艶姿ナミダ娘』 7” (SV-7346) / Japan / 1983
1983年11月1日に発売された7枚目のシングル「艶姿ナミダ娘」。
ASA-CHANGや浜野謙太を擁するSPECIAL BANDを率いて出演した『SUMMER SONIC 2008』で、1曲目に披露されたのがこの曲です。
韓国人プロデューサーのNight Tempoによる「艶姿ナミダ娘」のリエディット・バージョンを収録した『小泉今日子 – Night Tempo presents ザ・昭和グルーヴ』が昨年発表されて話題を呼びました。
■クライマックス御一緒に
あんみつ姫 『クライマックス御一緒に』 7″ (SV-7362) / Japan / 1984
1984年1月1日に、あんみつ姫名義で発売された「クライマックス御一緒に」。
『あんみつ姫』の2作目(1983年10月17日放送)と3作目(1984年1月9日放送)の主題歌として制作されたシングルです。
2作目の放送時にはまだレコード化しておらず、3作目が放送される直前に発売されました。
■ヤマトナデシコ七変化
小泉今日子 『ヤマトナデシコ七変化』 7″ (SV-7421) / Japan / 1984
1984年9月21日に発売された11枚目のシングル「ヤマトナデシコ七変化」。同じ年の11月7日には、ロング・バージョンを収録した12インチ・シングルがリリースされています(カップリングは「艶姿ナミダ娘」のロング・バージョン)。
デビュー曲から「ヤマトナデシコ七変化」までのシングル曲をまとめたベスト盤が同年12月に発売されたことを考えると、この時点での集大成といえる楽曲ではないかと。
■Celebration
小泉今日子 『Celebration』 LP (SJX-30249) / Japan / 1984
そしてこちらが、1984年12月5日に発売されたベスト・アルバム『Celebration』。それまでに発表されたシングル曲に、あんみつ姫名義の「クライマックス御一緒に」と、新曲「Celebration」を加えて編纂されたものです。
「Celebration」の作詞は田代マサシ(現・田代まさし)で、作編曲は鈴木雅之。コーラスもラッツ&スターのメンバーが担当しています。
■The Stardust Memory
小泉今日子 『The Stardust Memory』 7” (SV-7460) / Japan / 1984
1984年12月21日に発売された13枚目のシングル「The Stardust Memory」。翌日から劇場公開された初の主演映画『生徒諸君!』の主題歌です。
1985年1月8日から初の主演連続ドラマ『少女に何が起ったか』がTBS系列で放送開始。女優業も活発化してきた時期ですね。
『小泉今日子 TOUR 2022 KKPP (Kyoko Koizumi Pop Party)』全15公演のオープニングを飾ったのが「The Stardust Memory」でした。
■なんてったってアイドル
小泉今日子 『なんてったってアイドル』 7” (SV-9073) / Japan / 1985
1985年11月21日に発売された17枚目のシングル「なんてったってアイドル」。言わずと知れた大ヒット曲ですね。
現在とは違い、歌手やタレントが自らをアイドルと呼ぶことなどなかった時代に「私はアイドル」と宣言する歌詞は衝撃的で、オリコン週間チャートや『ザ・ベストテン』『ザ・トップテン』といった歌番組で1位を獲得しています。
「小泉今日子の代表曲は?」と問われたら、この曲を挙げる方も多いのではないでしょうか。
■今日子の清く楽しく美しく
小泉今日子 『今日子の清く楽しく美しく』 LP (SJX-30290) / Japan / 1986
1986年2月21日に発売された8thアルバム『今日子の清く楽しく美しく』。
IDOL-SIDE(A面)とARTIST-SIDE(B面)に分けられていて、ジャケットの表と裏に各サイドのイメージに沿ったカバーアートが用いられています。
(ARTIST-SIDEの写真が良いので、ジャケット裏面の画像は帯を外して撮りました)
発売当時にこのアルバムを聴いていたファンにとっての目玉は、IDOL-SIDEに収録された「なんてったってアイドル」のアルバム・バージョンとアナザー・バージョンなのかも知れません。
しかし、和モノやシティ・ポップを好むようなリスナーにお勧めしたいのは、ARTIST-SIDEの「NUDIST」と「教会の前で」。両曲ともデビュー前の久保田利伸が書いた曲で、編曲は松任谷正隆、作詞は川村真澄です。
前述したリエディット企画『小泉今日子 – Night Tempo presents ザ・昭和グルーヴ』にも選ばれた「NUDIST」と、ファンキーなベースが印象的な「教会の前で」。どちらも良いです。
■夜明けのMEW
小泉今日子 『夜明けのMEW』 7” (SV-9147) / Japan / 1986
1986年7月10日に発売された19枚目のシングル「夜明けのMEW」。
作曲は筒美京平。「まっ赤な女の子」や「ヤマトナデシコ七変化」「なんてったってアイドル」といった筒美作品の中でも特に人気の高い曲です。
デビュー40周年を記念して2022年に放送された『NHK MUSIC SPECIAL 小泉今日子』のスタジオ・ライブでも披露されました。
■木枯しに抱かれて
小泉今日子 『木枯しに抱かれて』 7” (SV-9184) / Japan / 1986
1986年11月19日に発売された20枚目のシングル「木枯しに抱かれて」。
翌月(1986年12月13日)に公開された2作目の主演映画『ボクの女に手を出すな』の主題歌です。作詞作曲はTHE ALFEEの高見沢俊彦、編曲は井上鑑(いのうえあきら)。
■ザ・ベスト
小泉今日子 『ザ・ベスト』 2LP (SJV-5084~85) / Japan / 1986
デビュー曲「私の16才」から「夜明けのMEW」までのシングル(7インチ)A面曲で構成された『ザ・ベスト』。あんみつ姫名義の「クライマックス御一緒に」や12インチ・シングル曲は未収録です。
この2枚組ベストが発売されたのが、1986年12月16日。当時の小泉今日子が、既存のアイドルとは一線を画した唯一無二の存在であることを物語るようなアートワークが秀逸です。2年前にリリースされたベスト・アルバム『Celebration』のジャケットと見比べてみてください。
■水のルージュ
小泉今日子 『水のルージュ』 7” (SV-9218) / Japan / 1987
1987年2月25日に発売された21枚目のシングル「水のルージュ」。同年5月1日にはリミックス版の12インチ・シングルもリリースされました。
この年の7月に出た11thアルバム『Phantásien』や、1989年に発表された14thアルバム『KOIZUMI IN THE HOUSE』にも異なるバージョンが収録されています。
■GOOD MORNING-CALL
小泉今日子 『GOOD MORNING-CALL』 7” (SV-9322) / Japan / 1988
1988年3月9日に発売された25枚目のシングル「GOOD MORNING-CALL」。
シングル曲としては、小泉今日子が初めて歌詞を書いた曲です。作曲は小室哲哉、編曲は清水信之。
本人も出演したクノール・カップスープのCMソングに起用され、オリコン週間チャート2位を獲得。CMの女王と呼ばれ「小泉今日子が出演したCMの商品は必ず売れる」と言われていた時代を象徴するヒット曲です。
細野晴臣が作曲したB面の「は・じ・め・て」は、NHK『みんなのうた』の放送曲として1987年12月〜1988年1月にオンエアされました。
■夏のタイムマシーン
小泉今日子 『夏のタイムマシーン』 12” (SJX-7016) / Japan / 1988
1988年7月6日に発売された12インチ・シングル(ミニアルバム)。
A面収録の「夏のタイムマシーン」は、筒美京平が作曲した9分43秒の長尺曲。B面には「Live On Saturday Night」と、三菱エアコン霧ヶ峰のCMソング「快力!ヨーデル娘」の2曲が収録されています。
ちなみに、7インチ用に短く編集された「短篇・夏のタイムマシーン」の非売品レコードも存在しますが、残念ながら入手できておりません。
■快盗ルビイ
小泉今日子 『快盗ルビイ』 7” (SV-9384) / Japan / 1988
1988年11月12日に劇場公開された主演映画『快盗ルビイ』の主題歌として制作されたシングル(1988年10月26日発売)。
大瀧詠一が作曲とアレンジを手がけた和製ウォール・オブ・サウンドの名曲です。作詞は、映画の監督/脚本を務めたイラストレーターの和田誠が担当。
B面には、共演者の真田広之とデュエットした挿入歌「たとえばフォーエバー」が収録されています。
■ナツメロ
小泉今日子 『ナツメロ』 LP (SJX-30377) / Japan / 1988
1988年12月17日に発売されたカバー・アルバム『ナツメロ』。キャンディーズやピンク・レディー、シャネルズ(ラッツ&スター)、キャロルといったグループのヒット曲を取り上げています。
本作からシングルカットされたフィンガー5のカバー「学園天国」は、小泉今日子が陣内孝則と共演したフジテレビ系のドラマ『愛しあってるかい!』の主題歌に起用され、ドラマと共に大ヒットを記録。当初、このシングルが制作される予定はなかったそうで、次作『KOIZUMI IN THE HOUSE』がリリースされた約半年後(1989年11月1日)に発売されています。
ちなみに、本作のアートディレクターは安斎肇。テレビ朝日の人気番組『タモリ倶楽部』で名物コーナー「空耳アワー」の進行を務めるソラミミストの安斎さんです。
ダンスミュージックに接近した「Fade Out」以降の小泉今日子
■Fade Out
小泉今日子 『Fade Out (Short Version)』 7” (SV-9422) / Japan / 1989
1989年5月10日にリリースされた「Fade Out」の7インチ。
同じ月に発売された『KOIZUMI IN THE HOUSE』から先行カットされたシングルで、近田春夫が作詞、作曲、編曲を担当。ハウスが一般に浸透していなかった時代に、この曲を小泉今日子に歌わせた近田春夫のセンスに脱帽です。
1989年7月28日には、近田自身によるリミックスを収録した12インチ『Fade Out – SUPER REMIX TRACKS』も制作されました。
■Fade Out (YU-SEN VERSION)
小泉今日子 『Fade Out (Short Version)』 promo 7” (SV-9422) / Japan / 1989
そしてこちらは、有線放送用の非売品7インチ。一般発売されたものとは異なるバージョンが収録されています。
入手困難なレコードですが、探してみてください。
■KOIZUMI IN THE HOUSE
小泉今日子 『KOIZUMI IN THE HOUSE』 LP (SJX-30383) / Japan / 1989
1989年5月21日に発売された14thアルバム『KOIZUMI IN THE HOUSE』。
7インチよりも長尺(7分28秒)の「Fade Out」を含む10曲中5曲を近田春夫が担当。ピチカート・ファイヴの小西康陽も「CDJ」と「男の子はみんな」の2曲を提供しています。
モンチ田中率いるM.I.D.が手がけた「水のルージュ (Break “ACID” Beats MIX)」も必聴!
ハウスやダブ、ヒップホップなどの要素を取り入れた最先端の作品として話題を呼んだ『KOIZUMI IN THE HOUSE』は、小泉今日子の音楽活動を語る上で欠かすことのできない最重要作です。
■KOIZUMIX PRODUCTION I
KYOKO KOIZUMI (KOIZUMIX PRODUCTION) 『KOIZUMIX PRODUCTION I』 12” (VIJL-11001) / Japan / 1990
1990年7月21日に、3枚同時にリリースされたKOIZUMIX PRODUCTIONの12インチ。
同じ日に発売された15枚目のフルアルバム『Nº 17』(じゅうななばん)に収録された楽曲の別バージョンやインストを、3枚に分けてリリースしたもので、アレンジとプロデュースは藤原ヒロシ&屋敷豪太。
和製ラヴァーズ・ロックのコンピレーション・アルバム『RELAXIN’ WITH JAPANESE LOVERS VOLUME 2』(2004年)にも収録された「La La La…」のエクステンデッド・バージョンを聴くことができる1枚目は、特に人気の高いレコードです。
90年代の小泉今日子は、KOIZUMIX PRODUCTION名義でクラブミュージックの要素を取り入れた楽曲を発表しながら、同時に「あなたに会えてよかった」(1991年度オリコン年間シングルチャート6位)や「優しい雨」「My Sweet Home」といった曲をヒットチャートに送り込んでいました。
当時の日本で、一般層にもコアなリスナーにもアピールできる作品を世に送り出していた数少ないアーティストのひとりです。
■KOIZUMIX PRODUCTION II
KYOKO KOIZUMI (KOIZUMIX PRODUCTION) 『KOIZUMIX PRODUCTION II』 12” (VIJL-11002) / Japan / 1990
2枚目は、「夜」と「ドライブ」のエクステンデッド・バージョンやダブ・ミックス、インストを収録。
ちなみに、小泉今日子が発表した楽曲の中には、藤原ヒロシ&屋敷豪太が作編曲した「ドライブ」と、テイ・トウワが作詞、作曲、編曲を手がけた「DRIVE」が存在します。テイ・トウワ版の「DRIVE」が発表されたのが1992年なので、こちらの方が先ですね。
本作のラベルやジャケットにはアルファベットで「DRIVE」と記載されていますが、歌詞カードにはカタカナ表記が採用されています。
■KOIZUMIX PRODUCTION III
KYOKO KOIZUMI (KOIZUMIX PRODUCTION) 『KOIZUMIX PRODUCTION III』 12” (VIJL-11003) / Japan / 1990
3枚目は「No No No」と「グッド・バイ・マイ・ラブ」の別バージョンを収録。「グッド・バイ・マイ・ラブ」は、アン・ルイスのヒット曲をカバーしたものです。
小泉ファンは3枚とも聴き逃し厳禁。コンプリートを目指してください。
■DUB MASTER X REMIX
kyoko koizumi 『DUB MASTER X REMIX』 12” (VIJL-15002) / Japan / 1991
1991年11月21日に『HIROSHI FUJIWARA REMIX』と『OTO REMIX』と共に発売された12インチ『DUB MASTER X REMIX』。
同年7月26日に発表された16枚目のフルアルバム『afropia』からカットされた12インチで、「風になりたい」のインスト、「プロセス」のアルバム・バージョンとダブ・バージョンを収録しています。
■KOIZUMIX PRODUCTION VOL.1 (N.Y. REMIX OF BAMBINATER)
KYOKO KOIZUMI (KOIZUMIX PRODUCTION) 『KOIZUMIX PRODUCTION VOL.1 (N.Y. REMIX OF BAMBINATER)』 12” (VIJL-18101) / Japan / 1993
1993年4月7日に、2枚同時にリリースされたKOIZUMIX PRODUCTIONの12インチ。どちらも1992年12月16日にKOIZUMIX PRODUCTION名義で発表された『Bambinater』の収録曲をリミックスしたものです。
VOL.1は、BLAZE、ボビー・コンダース、パル・ジョーイによるリミックスを収録。BLAZEが手がけた「SEXY HEAVEN (King Street Sound Club Mix)」が最高です。
■KOIZUMIX PRODUCTION VOL.2 (LONDON REMIX OF BAMBINATER)
Kyoko Koizumi (KOIZUMIX PRODUCTION) 『KOIZUMIX PRODUCTION VOL.2 (LONDON REMIX OF BAMBINATER)』 12” (VIJL-18102) / Japan / 1993
VOL.2のリミキサーは、YOUNG DISCIPLES、THE RAPINO BROTHERS、マーク・フェルナンデス。
YOUNG DISCIPLESが手がけた「DRIVE(London Drive Mix)」のオリジナル・バージョンは、テイ・トウワ版の「DRIVE」です。
■Remix Travel Rock
KYOKO KOIZUMI (KOIZUMIX PRODUCTION) 『Remix Travel Rock』 12″ (VIJL-18104) / Japan / 1994
1994年1月21日に発売された12インチ『Remix Travel Rock』。
ラベルに記載されているアーティスト名はKYOKO KOIZUMIですが、ジャケットのバーコード上部にKOIZUMIX PRODUCTIONのマークを確認することができます。
『TRAVEL ROCK』(1993年11月21日発売)収録曲のリミックスとインストで構成された本作の注目曲は「RAIN (ALTERNATIVE REFLEX VERSION)」。原曲の作編曲を手がけた高木完によるリミックスで、サンプリングソースは映画『ロッキー』サントラ盤の収録曲「Reflections」。BUDDHA BRAND「Return of the Buddha Bros.」ネタとしても知られている曲ですね。
■夢の底
小泉今日子 『夢の底』 promo 12” (SLP-92) / Japan / 1998
ネット上での一般公募による楽曲で構成されたアルバム『KYO→』(1998年10月7日発売)から、プロモーション用にアナログカットされた「夢の底」の12インチ。
関西を中心にライターやラジオDJとして活動する岡野晶が書いた「夢の底」は、この年の1月に「つつみ込むように…」でデビューを果たしたMISIAがコーラスで参加していることで知られています。
アレンジを担当したのは、キハラ龍太郎(元Original Love)と石成正人。THE BRAND NEW HEAVIESを彷彿させる佳曲に仕上がっています。
この12インチはプロモ用の非売品なので、なかなか見かけません。
他にも、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』の挿入歌として役名の天野春子名義で発表した「潮騒のメモリー」の7インチ(2013年)や、中井貴一とデュエットしたフジテレビ系ドラマ『続・最後から二番目の恋』のエンディング・テーマ「T字路」の12インチ(2014年)、デビュー35周年を記念して制作された「Fade Out (35th Anniversary Mix)」の12インチ(2017年)などの非売品レコードが存在しますが、いずれも入手困難です。
■KOIZUMIX PRODUCTION IV 89-99 VINYL COLLECTION
kyoko koizumi (KOIZUMIX PRODUCTION) 『KOIZUMIX PRODUCTION IV 89-99 VINYL COLLECTION』 LP (VIJL-60030) / Japan / 1998
1998年12月19日にリリースされた『KOIZUMIX PRODUCTION IV 89-99 VINYL COLLECTION』。同日発売された10曲入りCD『89-99 COLLECTION』とは収録内容が異なります。
藤原ヒロシとフリッパーズ・ギターが手がけた「No No No (Flipper’s + HF Mix)」や、浜崎貴司(FLYING KIDS)とのデュエット曲「ラブバラ (LOVE-BALLAD)」のニュー・ミックスを収録した人気盤ですね。
■drivin’ nite; goin’ on
Kyoko Koizumi 『drivin’ nite; goin’ on』 12″ (VIJL-60032) / Japan / 1999
1999年4月21日に発売された12インチ「drivin’ nite; goin’ on」。
同年5月21日に発表されたミニアルバム『Inner Beauty』からの先行カットで、キハラ龍太郎が手がけた「drivin’ nite; goin’ on」と、『Nº 17』収録の藤原ヒロシ&屋敷豪太プロデュース曲「いつか きっと」を4 HEROがリミックス。ボーナストラックとして、キハラ自身による「drivin’ nite; goin’ on」のリミックスを加えた3曲入りです。
4 HEROがドラムンベースの枠を超えて世界中の音楽ファンから絶大な支持を獲得した歴史的名盤『TWO PAGES』をリリースしたのが、1998年7月。彼らは前作『PARALLEL UNIVERSE』(1994年)ですでに高い評価を得ていましたが、それでも『TWO PAGES』のリリースからわずか9ヶ月後に、小泉今日子が4 HERO を起用した12インチを発表したことに驚きました。
小泉ファン、4 HEROファンはもちろん、多くの音楽ファンに聴いていただきたい名曲です。
フィーチャリング・ヴォーカリストとして参加した名曲
女優業がメインとなっていた2000年以降も『KYO→2 ~Anniversary Song~』(2001年)、『厚木I.C.』(2003年)、『Nice Middle』(2008年)、『Koizumi Chansonnier』(2012年)といったアルバムを発表し、音楽活動を継続していた小泉今日子。
ゲスト・ヴォーカリストとして、ASA-CHANG & 巡礼やPIZZICATO ONEの作品にも参加。切腹ピストルズ、向井秀徳 (ナンバーガール / ZAZEN BOYS)、マヒトゥ・ザ・ピーポー(GEZAN)、ILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB)、伊藤雄和(OLEDICKFOGGY)と共に制作した「日本列島やり直し音頭二〇二〇」がリリースされた際には、大きな話題を呼びました。
ということで、小泉今日子がゲスト・ヴォーカリストとして参加した2枚のアナログ盤を紹介します。
■空洞です
HIROSHI II HIROSHI feat. 小泉今日子『空洞です』 12″ (HR12S006) / Japan / 2017
藤原ヒロシと川辺ヒロシ(TOKYO No.1 SOUL SET)のユニットが、小泉今日子をヴォーカリストに迎えて発表した「空洞です」の12インチ。ゆらゆら帝国のカバーです。
本作をリリースしたHMV record shopの各店舗で、2017年12月20日に先行販売。12月27日から一般販売がスタートしました。
もともとは2011年に発売された映画『モテキ』との連動企画カバー・コンピレーション『モテキ的音楽のススメ Covers for MTK Lovers盤』というCDに収録されていた音源です。
この12インチのために制作されたB面収録のダブ・ミックスが素晴らしいので、小泉ファンは必携!
■ひとつ屋根の下
坂本真綾 『ひとくちいかが? feat. 土岐麻子 / ひとつ屋根の下 feat. 小泉今日子』 7″ (KMKN-090) / Japan / 2021
2021年8月4日に発売された坂本真綾の7インチ。
同年3月17日に発表されたデュエットアルバム『Duets』からのアナログカットで、B面収録の「ひとつ屋根の下」に小泉今日子が参加しています。
作曲は「優しい雨」を書いた鈴木祥子。
黒猫同盟
■Un chat noir
黒猫同盟 『Un chat noir』 LP (VIJL-60244) / Japan / 2021
2021年に発表された黒猫同盟の1stアルバム『Un chat noir』。
黒猫同盟は、コイズミキョウコ(小泉今日子)がSpotifyオリジナルPodcast『ホントのコイズミさん』でかける曲を制作するために、元the pillowsの上田ケンジと結成した音楽ユニットで、コンセプトは「2匹の黒猫の目線で見つめた世界」。
2人が同じ時期に保護猫を引き取ったことがユニット名の由来とのこと。名前は上田家がひじきちゃんで、コイズミ家が小福田さん。どちらもメスの黒猫です。
2021年9月29日にLP、CD、カセットテープの3形態で発売された『Un chat noir』は、収録内容がそれぞれ異なり、LPはCD未収録トラックを含む全15曲を収録。ちなみに9月29日は「招き猫の日」です。
Night Tempoが手がけたリエディット作品
■Night Tempo presents The Showa Groove
Kyoko Koizumi 『Night Tempo presents The Showa Groove』 7″ (NCR087) / Japan / 2022
「NUDIST」と「艶姿ナミダ娘」のリエディット・バージョンを収録した『小泉今日子 – Night Tempo presents ザ・昭和グルーヴ』の7インチが、2022年12月28日に発売。同年1月19日に配信でリリースされた作品がフィジカル化したものです。リエディットとはいえ小泉今日子の新作をレコードで聴けるのは、ファンとして嬉しい限り。
新譜や旧譜のアナログ・リイシューなど、今後も小泉今日子のレコードが世に送り出されることを願います。
執筆:五辺宏明