ライブ・アルバムの名盤をレコードで聴こう!
音楽ファンの皆さまが「サブスクやYouTube、SNSなどで知ったアーティストの作品をレコードで聴いてみたい!」と思ったときに買うのは、どんなレコードでしょうか?
おそらく、好きになるきっかけになった曲が入っているシングル盤やスタジオ・アルバム、あるいは代表作といわれるレコードを最初に入手するのではないかと。
しかし、そのアーティストのディスコグラフィを調べたときに、スタジオ・アルバムと同じくらい高い評価を得ているライブ・アルバムが存在するケースがあります。
目次
■BOB MARLEY AND THE WAILERS 『LIVE!』
BOB MARLEY AND THE WAILERS 『LIVE!』 LP (ILPS 9376) / UK / 1975
ボブ・マーリー率いるTHE WAILERSの名演を収録した『LIVE!』。1975年7月にロンドンのライシアム劇場で録音された本作は、他のスタジオ・アルバムに引けを取らない人気盤です。
2015年に発表された米『Rolling Stone』誌の「50 Greatest Live Albums of All Time」で34位に選出された説明不要の大名盤ですね。
「Get Up, Stand Up」や「No Woman, No Cry」といった名曲を収録した『LIVE!』は、これからボブ・マーリーを聴いてみたいという方にもオススメです。
■DONNY HATHAWAY 『LIVE』
DONNY HATHAWAY 『LIVE』 LP (SD 33-386) / US / 1972
そして、こちらも。1971年にハリウッドとニューヨークで録音されたダニー・ハサウェイの名盤『LIVE』(1972年発表)。
ダニー・ハサウェイの最高傑作として本作を挙げるファンも多いことでしょう。個人的にもライブ盤の名作を選ぶ際に、真っ先に浮かんでくるのがこのアルバムです。
横浜レコードのサイトに掲載された定番レコードの記事でも本作を取り上げておりますが、ライブ・アルバムを語る上でこの歴史的名盤を外すことはできません。手を叩き、歓声を上げ、大合唱する観客たちの興奮が伝わってくる最上級の実況録音盤です。
ということで今回は、人気アーティストのライブ・アルバムを紹介したいと思います。我が家のレコード棚から愛聴盤を選んでみました。
掲載したレコードの中には高値で取引されているものもあります。状態の良い人気盤を手放す際には、MIONアップサイクルにご一報ください!
魅力的なライブ・バージョン
「好きな曲のライブ・バージョンを聴いてみたら、そちらのほうが良かった」ということも少なくありません。
先に挙げた2枚もそうですね。ボブ・マーリーの「No Woman, No Cry」や、ダニー・ハサウェイの「The Ghetto」は、ライブ・バージョンの方が圧倒的に好みです。
■THE STYLE COUNCIL 『HOME AND ABROAD - THE STYLE COUNCIL, LIVE!』
THE STYLE COUNCIL 『HOME AND ABROAD - THE STYLE COUNCIL, LIVE!』 LP (GHS 24103) / US / 1986
THE JAMのフロントマンとして活躍していたポール・ウェラーが、同バンド解散後に元DEXYS MIDNIGHT RUNNERSのミック・タルボットと結成したTHE STYLE COUNCILのライブ盤。2ndアルバム『OUR FAVOURITE SHOP』(1985年)のツアーで録音された音源です。
彼らの人気曲「My Ever Changing Moods」を聴きたいと思ったときにターンテーブルに乗せるのは、毎回このレコードですね。
■AEROSMITH 『CLASSICS LIVE! II』
AEROSMITH 『CLASSICS LIVE! II』 LP (C 40855) / US / 1987
1987年にリリースされたAEROSMITH『CLASSICS LIVE! II』。私が初めて買ったAEROSMITHのアルバムです。
1984年の大晦日にボストンで録音された6曲に、1978年録音の「Draw the Line」と1986年録音の「Let the Music Do the Talking」を加えた8曲を収録。
スタジオ・バージョンよりも、はるかに熱量の高い「Walk This Way」をぜひ!
アコースティック・ライブ・アルバムの名盤
1989年からスタートしたアコースティック・ライブ企画『MTV Unplugged』。世界中の音楽ファンから支持を集める人気プログラムですね。同番組からポール・マッカートニーや、エリック・クラプトン、マライア・キャリー、NIRVANAといった人気アーティストの名盤が生み出されています。
アンプラグド・ブームのきっかけを作ったのは、1990年に発表されたこのアルバム。
■TESLA 『FIVE MAN ACOUSTICAL JAM』
TESLA 『FIVE MAN ACOUSTICAL JAM』 LP (9 24311 1) / Europe / 1990
1990年7月2日にフィラデルフィアで録音されたTESLAの『FIVE MAN ACOUSTICAL JAM』。80年代半ばから90年代初頭に人気を博したアメリカのハードロック・バンドがリリースしたこのアコースティック・ライブ・アルバムは『MTV Unplugged』が制作したものではありません。
アルバムが全米チャート12位、そしてシングルカットされたFIVE MAN ELECTRICAL BANDのカバー「Signs」が全米8位に入るヒットを記録。アメリカレコード協会(RIAA)からプラチナ認定された本作の成功が口火となり『MTV Unplugged』も盛り上がりを見せるようになったといわれています。
■ALICIA KEYS 『UNPLUGGED』
ALICIA KEYS 『UNPLUGGED』 2LP (82876-67424-1) / US / 2005
『MTV Unplugged』の音源から制作された数多くの作品の中で、個人的に最も愛聴しているのは、2005年に発表されたアリシア・キーズの『UNPLUGGED』。本作もRIAAからプラチナ・ディスクに認定された大ヒット作です。
録音日は2005年7月14日。当時『MTV Unplugged』は2年半ほど制作を休止していましたが、アリシアの強い希望により復活。念願だった出演を果たした彼女の素晴らしいパフォーマンスを堪能できる名盤です。
MAROON 5のアダム・レヴィーンやモス・デフ、コモン、ダミアン・マーリー(ボブ・マーリーのご子息)との共演も聴きどころ。
ジャズの傑作ライブ・アルバム
■菊地雅章 『ダンシング・ミスト/菊地雅章・イン・コンサート』
菊地雅章 『ダンシング・ミスト/菊地雅章・イン・コンサート』 LP (FX-8515) / Japan / 1971
日本を代表するジャズ・ピアニスト、菊地雅章(きくちまさぶみ)のライブ盤。
1970年11月13日に東京サンケイホールで録音された「Dancing Mist」と「Yellow Carcass in the Blue」の2曲を収録。どちらも1970年に発表されたスタジオ・アルバム『POO-SUN』の曲です。
メンバーは、菊地雅章(エレピ、ピアノ)、峰厚介(ソプラノサックス)、菊地雅洋(ハモンドオルガン、エレピ)、池田芳夫(ベース)、村上寛(ドラム)、岸田恵二(ドラム)。
和ジャズ屈指の傑作ライブ・アルバム。未聴の方はぜひ!
■PHAROAH SANDERS 『LIVE AT THE EAST』
PHAROAH SANDERS 『LIVE AT THE EAST』 promo LP (AS-9227) / US / 1972
名門Impulse! Recordsから1972年に発表されたファラオ・サンダースのライブ・アルバム。白ラベルのプロモ盤です。ファラオのライブ盤といえば、名曲「You’ve Got to Have Freedom」を収録した『LIVE…』(1982年発表)も人気ですが、今回はこちらを選びました。
1971年にブルックリンのジ・イーストで録音された本作には、ファラオ(サックス)、ジョー・ボナー(ピアノ)、スタンリー・クラーク(ベース)、セシル・マクビー(ベース)、ノーマン・コナーズ(ドラム)といった10名の凄腕ミュージシャンと女性コーラスが参加しています。
■NOAH HOWARD 『LIVE IN EUROPE VOL.1』
NOAH HOWARD 『LIVE IN EUROPE VOL.1』 LP (SR 105) / France / 1975
フランスのSun Recordsから発売されたノア・ハワードのライブ盤。1975年にヨーロッパの様々な会場で録音された音源で構成されています。
主なメンバーは、ノア・ハワード(アルトサックス)、加古隆(ピアノ)、ケント・カーター(ベース)、モハメド・アリ(ドラム)。B面1曲目に収録されたジョン・コルトレーンの名曲「Olé」のみ、オリバー・ジョンソンがドラムを叩いています。
ピアニストは、現代音楽や映像音楽を手掛ける作曲家の加古隆。1971年に渡仏してオリヴィエ・メシアンに師事した加古は、1973年にフリー・ジャズのピアニストとしてデビューしています。
フリー・ジャズのサックス奏者として知られるノア・ハワードですが、本作はスピリチュアル・ジャズと呼ばれているような音楽を好んで聴いている方にもおすすめしたいレコードですね。
ソウル/ファンクの傑作ライブ・アルバム
■CURTIS MAYFIELD 『CURTIS / LIVE!』
CURTIS MAYFIELD 『CURTIS / LIVE!』 2LP (CRS 8008) / US / 1971
1971年に録音されたカーティス・メイフィールドの名盤『CURTIS / LIVE!』(1971年発表)。
会場は、ダニー・ハサウェイ『LIVE』のB面収録音源がレコーディングされたニューヨークのビター・エンド。同じ年に同じ会場で録音された本作も、臨場感あふれる素晴らしいライブ・アルバムです。
前年に発表された1stアルバム『CURTIS』の曲や、THE IMPRESSIONS在籍時代の楽曲が収録されていますが、いずれも魅力を増しているように思います。
■JAMES BROWN 『REVOLUTION OF THE MIND (RECORDED LIVE AT THE APOLLO VOL. III)』
JAMES BROWN 『REVOLUTION OF THE MIND (RECORDED LIVE AT THE APOLLO VOL. III)』 2LP (PD 3003 / SQBO-94254) / US / 1972 / Club Edition
1971年7月に録音されたJBことジェームス・ブラウンの大名盤『REVOLUTION OF THE MIND』(1971年発表)。
JBはアポロ・シアターでライブ・レコーディングしたアルバムを3枚発表していて、いずれも高い評価を得ていますが、個人的にはこの3作目が一番好み。ラストの「Hot Pants (She Got to Use What She Got to Get What She Wants)」が最高です。
今回掲載したのは、Capitol Recordsが制作したクラブ・エディション。1972年に発売された会員制通販用のレコードです。
型番はPolydor Records から発売されたUSオリジナル盤とは異なる「SQBO-94254」で、ラベルの下部に「Mfd. by Capitol Records, Inc」と書かれています。
(ジャケットには、USオリジナル盤の型番「PD 3003」も記載されています)
■TERRY CALLIER 『ALIVE』
TERRY CALLIER 『ALIVE』 LP (MRBLP19) / UK / 2001
イギリスのMr Bongo から2001年にリリースされたテリー・キャリアーのライブ盤。サイン入りです。
2000年にロンドンのジャズ・カフェで録音された音源で、名盤『WHAT COLOR IS LOVE』(1972年)収録の「You Goin’ Miss Your Candyman」や、90年代にDJやレアグルーヴ・ファンを中心に再評価されるきっかけとなった名曲「I Don’t Want to See Myself (Without You)」が感動的です。
本作がCDのみならず、アナログ盤も制作されたことは非常に喜ばしいことです。しかし、10曲収録されたCDに対し、LPは6曲のみ。CD未収録の「Timepiece」が入っているものの、人気曲の「Ordinary Joe」や「What Color Is Love」「Dancing Girl」がカットされているのが残念。全曲収録したアナログ盤が発売されることを切に願います。
ワールドミュージックの傑作ライブ・アルバム
■EDDIE PALMIERI WITH HARLEM RIVER DRIVE 『EDDIE PALMIERI RECORDED LIVE AT SING SING』
EDDIE PALMIERI WITH HARLEM RIVER DRIVE 『EDDIE PALMIERI RECORDED LIVE AT SING SING』 LP (CLP-1303) / US / 1972
ニューヨーク・サルサを代表するピアニスト、エディ・パルミエリ率いるHARLEM RIVER DRIVEが、1972年に発表したライブ・アルバム。「鍵盤の巨人」と呼ばれた実兄のチャーリー・パルミエリもオルガンで参加しています。
悪名高い犯罪者を数多く収容し、最高度の警備レベルを誇るニューヨーク州シンシン刑務所(Sing Sing Correctional Facility)で行われた慰問ライブの模様を収録。ラテン・ジャズ/サルサを語る上で外すことのできない名盤です。
エディ・パルミエリのサイン入り。
■TANIA MARIA 『LIVE』
TANIA MARIA 『LIVE』 LP (ACV 130.005) / France / 1979
クラブ・クラシック「Come with Me」が人気のブラジル人シンガー/ピアニスト、タニア・マリアが1979年に発表したライブ盤。
録音は1978年11月。コペンハーゲンのカフェ・モンマルトル(Jazzhus Montmartre)にトリオ編成で出演した際の音源で、自身の楽曲に加え、ブラジル人作曲家のイヴァン・リンスとジョニー・アルフのカバーを取り上げています。
ジャズ寄りの作品ですが、ブラジル音楽ファンにもおすすめしたい好作品。
■FELA RANSOME-KUTI AND THE AFRICA ’70 WITH GINGER BAKER 『LIVE!』
FELA RANSOME-KUTI AND THE AFRICA ’70 WITH GINGER BAKER 『LIVE!』 LP (SP 8401) / US / 1973 Repress
アフロビート創始者のフェラ・クティ率いるAFRICA ’70と、元CREAMのジンジャー・ベイカーの共演盤。1971年に録音されたライブ・アルバムで、膨大な数が存在するフェラ・クティのアルバムの中でも人気の高い作品です。
リリース50周年を記念して、1978年の『ベルリン・ジャズ・フェスティバル』におけるトニー・アレンとジンジャー・ベイカーのドラム・バトルを追加収録した2枚組のリマスター盤LPが発売され、話題を呼びました。
私が所有しているのは1973年のリプレス盤。残念ながら1971年プレスのオリジナル盤は入手できておりません。
ロックの傑作ライブ・アルバム
■MC5 『KICK OUT THE JAMS』
MC5 『KICK OUT THE JAMS』 LP (EKS-74042) / US / 1969 / Censored
1968年10月にデトロイトのグランデ・ボールルームで録音されたMC5の1stアルバム『KICK OUT THE JAMS』(1969年発表)。『Rolling Stone』誌が2015年に発表した「50 Greatest Live Albums of All Time」で8位に選ばれた傑作ライブ盤です。
このアルバムは、A面2曲目に収録されたタイトル曲が始まる直前に「Kick out the jams, motherfuckers!」と叫んでいる部分が修正されているバージョンと、無修正のバージョンが存在します。私が所有しているのは残念ながら修正版。問題の箇所が「Kick out the jams, brothers and sisters!」と編集されています。
■JANIS JOPLIN 『JOPLIN IN CONCERT』
JANIS JOPLIN 『JOPLIN IN CONCERT』 2LP (40AP 1247~8) / Japan / 19?? Reissue
1970年10月4日にこの世を去ったジャニス・ジョプリンの2枚組ライブ・アルバム。
彼女の死後(1972年)に発表された作品で、1枚目はBIG BROTHER & THE HOLDING COMPANY在籍時代(及びリユニオン・ライブの音源)、2枚目は亡くなる直前まで行動を共にしたFULL TILT BOOGIE BANDとの演奏が収録されています。
今回掲載したレコードは、80年代後半に入手した国内再発盤。1978年に「ロック・ベスト100」シリーズの1枚として再発された国内盤と同じ型番(40AP 1247~8)ですが、ジャケットのデザインが微妙に異なります。
後に中古レコード店でUSオリジナル盤や国内初版を何度も見かけていますが、それらを買うことはなく、ずっとこの再発盤を聴いています。高校時代に少ない小遣いをなんとかやり繰りして、田舎の小さなレコード屋で買った新品のレコードに針を落として感動したことを、今でも覚えているので。
■RORY GALLAGHER 『IRISH TOUR ’74』
RORY GALLAGHER 『IRISH TOUR ’74』 2LP (MP 9467/8) / Japan / 1974
アイルランド出身のギタリスト、ロリー・ギャラガーの代表作『IRISH TOUR ’74』。
1974年初頭に行われたアイリッシュ・ツアーの音源で構成された2枚組のライブ・アルバム。D面の2曲はツアー中に録音されたジャムセッション音源です。
私が所有しているのは国内盤LP。欧米盤とは異なり、ロリー・ギャラガーの写真が使用されている独自のジャケットです。
インサートに、アイリッシュ・ツアー後に実現した初来日公演のライブ・レポートが掲載されているので、読みながらレコードを聴くのも良いですね。
ハードコア/スラッシュメタルの傑作ライブ・アルバム
■AGNOSTIC FRONT 『LIVE AT CBGB』
AGNOSTIC FRONT 『LIVE AT CBGB』 LP (88561-3001-1) / US / 1989
ニューヨーク・ハードコア界の最重要バンド、AGNOSTIC FRONTが1989年に発表した傑作ライブ・アルバム。
本作が録音されたのは1988年8月21日で、会場はマンハッタンのCBGB。アメリカン・パンク、ニュー・ウェイヴ、ハードコアを語る上で欠かすことのできない伝説のライブハウスです。
現在も精力的に活動を続けているAGNOSTIC FRONT ですが、1992年に一度解散しています。
■AGNOSTIC FRONT 『LAST WARNING』
AGNOSTIC FRONT 『LAST WARNING』 LP (RR 9078 1) / Netherlands / 1993
1992年12月20日の解散ライブと、1983年に発表された1st EP『UNITED BLOOD』の音源で構成された『LAST WARNING』。この解散ライブもCBGBで行われています。
■SLAYER 『DECADE OF AGGRESSION』
SLAYER 『DECADE OF AGGRESSION』 2LP (510 605-1) / Europe / 1991
METALLICA、ANTHRAX、MEGADETHと共に「スラッシュメタル四天王」と称されるSLAYERが、1991年に発表したライブ盤。
1990年10月14日(ロンドン)、1991年3月8日(カリフォルニア)、1991年7月13日(フロリダ)の演奏で構成されています。
1~5枚目のフルアルバムとEP『HAUNTING THE CHAPEL』(1984年)の楽曲を収録したベスト選曲。「SLAYERを聴いてみたいけど、どのアルバムから手を出したらよいかわからない」という方にもオススメ!
■S.O.D. 『LIVE AT BUDOKAN』
S.O.D. 『LIVE AT BUDOKAN』 LP (MFN 144) / UK & Europe / 1992
ANTHRAXのスコット・イアン(ギター)とチャーリー・ベナンテ(ドラム)、NUCLEAR ASSAULTのダン・リルカ(ベース)、M.O.D.のビリー・ミラノ(ヴォーカル)からなるS.O.D.(STORMTROOPERS OF DEATH)が、1992年に発表したライブ盤。
1stアルバム『SPEAK ENGLISH OR DIE』(1985)を発表後、短期間のツアーを行って活動を停止したS.O.D.が、1992年3月21日に突如、再結成ライブを行った際にレコーディングされた音源です。『LIVE AT BUDOKAN』というタイトルが付けられていますが、本作が録音されたのはニューヨークのザ・リッツ。彼ら流のジョークでしょうね。
一夜限りの再結成ということでしたが、1997年に活動を再開。1999年5月に2枚目のスタジオ・アルバム『BIGGER THAN THE DEVIL』をリリース。同年6月には、待望の初来日公演が実現しています。
2007年以降、S.O.D.は活動を停止。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響によりニューヨーク州がロックダウンしていた2020年の春に、スコット、チャーリー、ダンがS.O.D.の楽曲を演奏した動画がYouTubeに公開されました。いつの日か、4人揃ったS.O.D.がステージに立つ日が来ることを祈ります。
実際に観に行ったライブをレコードで聴く
最後に、私が実際に観に行ったライブの音源が使用されているレコードを掲載。これらの作品を聴くたびに、その当時の記憶が呼び起こされます。
■GBH 『LIVE IN JAPAN』
GBH 『LIVE IN JAPAN』 LP (NIGHT 362) / Italy / 2022
1991年4月12日にクラブチッタ川崎で録音されたGBHのライブ・アルバム。
こちらは、イタリアのNight of the Vinyl Dead Recordsから今年(2022年)の春に500枚限定で発売されたLP。トイズファクトリーから国内初版のCDがリリースされた1992年以降、初めて制作されたアナログ盤です。
1991年4月11日と12日にクラブチッタで行われたGBHの来日公演は、2日とも足を運びました。私が初めて体験したハードコアのライブです。
■AC/DC 『LIVE』
AC/DC 『LIVE』 2LP (7567-92212-1 / WX 493) / UK & Europe / 1992
1990~1991年に録音された音源で構成されたAC/DCのライブ・アルバム。
A面の「Thunderstruck」「Back in Black」「Fire Your Guns」と、C面の「You Shook Me All Night Long」は、私が観に行った『MONSTERS OF ROCK 1991』の演奏です。
チケットの半券です。
『MONSTERS OF ROCK』は、1980年から1996年までイギリスのドニントン・パークで行われていたハードロック/ヘヴィメタル系を中心としたロックフェス(2006年に一度だけ復活)。1983年以降はヨーロッパやアメリカ、ソ連、南米でも開催されている人気イベントです。
1991年8月17日にドニントン・パークで行われた同フェスには、METALLICA、MÖTLEY CRÜE、QUEENSRŸCHE、THE BLACK CROWES、そしてヘッドライナーのAC/DCが出演。初めて海外で観たライブの音源を聴くことができるこの2LPは、一生モノの宝物です。
■MARLENA SHAW 『LIVE IN TOKYO』
MARLENA SHAW 『LIVE IN TOKYO』 LP (VRJL 7007) / Japan / 2002
2002年6月28日に赤坂B flatで録音されたマリーナ・ショウのライブ盤。国内ジャズ・レーベルのエイティ・エイツが制作したアルバムです。
メンバーは、マリーナ・ショウ(ヴォーカル)、リッキー・ウッダード(テナーサックス)、クラレンス・マクドナルド(ピアノ)、ジェフ・チェンバース(ベース)、ロン・オーティス(ドラム)。
1975年にBlue Note Recordsから発表された『WHO IS THIS BITCH, ANYWAY?』収録曲の「Feel Like Makin’ Love」と「Loving You Was Like a Party」を聴くことができて嬉しかったことを、今でも覚えています。
2009年から2016年まで『WHO IS THIS BITCH, ANYWAY?』参加メンバーによるリユニオン・ライブがほぼ毎年開催されていて、私も2016年の引退ツアーを観に行きました。デヴィッド・T・ウォーカー(ギター)、チャック・レイニー(ベース)、ハーヴィー・メイソン(ドラム)、ラリー・ナッシュ(キーボード)といった凄腕ミュージシャンをバックに歌うマリーナ・ショウの姿を目にすることができたのは貴重な経験でしたが、より印象に残っているのはB flatで観たあの日のライブですね。
■THA BLUE HERB 『THE WAY HOPE GOES』
THA BLUE HERB 『THE WAY HOPE GOES』 12” (TBHR-035) / Japan / 2005
札幌を拠点に活動する最強のヒップホップ・グループ、THA BLUE HERBが2005年に発表した12インチシングル。こちらはアルバムではありませんが、2004年12月29日に新宿ロフトで録音された3曲のライブ音源が収録されています。
札幌在住のソウル・シンガー、JERRY “KOJI” CHESTNUTSをゲストに迎えて披露された「S.S.F.」「コンクリートリバー」「続・腐食」を聴くたびに、ステージに立つ彼らの勇姿が目に浮かびます。そして、降り積もった雪を踏みしめながら歩いた歌舞伎町の光景も。
■大西順子セクステットプラス 『THE MOST LIVE!』
大西順子セクステットプラス 『THE MOST LIVE!』 2LP (SCLP-1041~1042) / Japan / 2020
国内ジャズ・シーンを牽引するピアニストの大西順子が、2019年11月に新宿ピットインで録音したライブ・アルバム『THE MOST LIVE!』。
大西順子セクステットのメンバーにゲスト・ミュージシャンを加え、3夜連続(2019年11月22~24日)でライブ・レコーディングした28曲を完全収録した3枚組CD『Unity All』から、厳選された11曲をアナログ化した2LPです。
私が観に行った2日目に録音されたのは、C面収録の「Kind」と「Dark Chime」、D面収録の「Two Laps Behind」と「Dr. Pu! Poon」。
実際に生で聴いた演奏が4曲も採用されているのですから、思い入れの強い作品であることは間違いありません。ただ、この素晴らしい2LPを聴くたびに、全ての公演に足を運ばなかったことを後悔してしまうのです。
■envy 『LAST WISH Live at LIQUIDROOM Tokyo』
envy 『LAST WISH Live at LIQUIDROOM Tokyo』 2LP (PEL 151) / Germany / 2020
国内のみならず、海外でも絶大な人気を誇るenvyのワンマン・ライブを収録した『LAST WISH Live at LIQUIDROOM Tokyo』。現メンバーによる初のフルアルバムとなる『THE FALLEN CRIMSON』の発売記念ライブで演奏された16曲の中から、11曲が選出されています。
この2LPは、2020年11月にドイツのPelagic Recordsから発売されたもので、2021年4月より国内流通がスタート。限定のカラーレコードと、通常のブラック盤が発売されました。
本作が収録されたリキッドルーム公演が行われたのは、国内で新型コロナウイルスの感染者数が増え始めた2020年2月11日。そして同じ月にもう一度、envyのライブを観ています(2月29日、新代田フィーバー)。今よりもコロナに対する知識がなく、張りつめた空気の中で目撃した壮絶なパフォーマンスを忘れることはないでしょう。
このLPを聴くたびに、2020年2月に観た2本のライブと、当時の緊迫感がよみがえります。
執筆:五辺宏明