和モノ! シティ・ポップ! 日本人アーティストのレコードは海外でも人気

目次

海外からも注目を集めるシティ・ポップのレコード

 

シティ・ポップと呼ばれる日本人アーティストのレコードが人気を集めていますね。

 

松原みきの「真夜中のドア〜Stay With Me」や、竹内まりやの「プラスティック・ラブ」が海外で人気があり、それらのレコードがプレミア価格で取引されていることを報じる記事を、ネットやテレビで見かけることも少なくありません。

 

■竹内まりや 『VARIETY』

竹内まりや 『VARIETY』 LP (MOON-28018) / Japan / 1984

 

YouTubeにアップされたアンオフィシャルの音源が驚異的な再生回数を叩き出し、カバーバージョンが続出。今や世界中で大人気の「プラスティック・ラブ」を収録した『VARIETY』(1984年)。

 

2021年にリマスターを施した復刻盤LP(WPJL-10153)が発売されたことで、やや落ち着いた感があるものの、オリジナル盤は依然として高値で取引されています。しかし、10年ほど前までは中古レコード店の300円コーナーで簡単に見つかるレコードでした。どんなレコードが値上がりするかわかりませんね。

 

2017年ごろから「プラスティック・ラブ」が世界的な人気を獲得したのは間違いありませんが、それ以前からDJや和モノ愛好家から支持を集めていました。

 

クラブ・シーンで「プラスティック・ラブ」が再評価されたのは、夫である山下達郎の素晴らしいアレンジがあってのことでしょう。

 

■山下達郎 『FOR YOU』

山下達郎 『FOR YOU』 promo LP (RAL-8801) / Japan / 1982

 

オリコンの週間アルバムチャートで1位を獲得した山下達郎の大ヒット作『FOR YOU』(1982年)の見本盤LP。もともと帯は付いていません。

 

「Sparkle」や「Loveland, Island」「Love Talkin’ (Honey It’s You)」など、名曲ぞろいの『FOR YOU』は、シティ・ポップ・ブーム以降、最も人気のある山下達郎作品。本作のアナログ盤も、高値で取引されています。

 

発売当時から高い評価を受けていた名盤ですが、こちらも『VARIETY』と同様に300円コーナーの常連でした。レコード全盛期に大ヒットしたアルバムなので当然ですよね。大量生産されたわけですから。

 

『FOR YOU』のみならず、山下達郎のレコードは軒並み高騰しています。手放す際には、MIONアップサイクルにご連絡ください。

 

■シュガーベイブ 『SONGS』

シュガーベイブ 『SONGS』 LP (NAL-0001) / Japan / 1975

 

山下達郎や大貫妙子が在籍したシュガーベイブの名盤『SONGS』。大瀧詠一がエレックレコード内に設立したナイアガラ・レコードから、1975年4月に発表されたフルアルバムです。

 

初版LP(ナイアガラ/エレックレコード、NAL-0001)のジャケットにはバンド名が大文字で記載されていますが、日本コロムビアから翌年発売されたLP(ナイアガラ/日本コロムビア、LQ-7021-E)や、1981年の再発盤LP(ナイアガラ/CBS・ソニー、27AH 1240)は「Sugar Babe」表記が採用されています。

2015年に2枚組で発売された40周年記念のアナログ盤(SRJL 1090-1)は、大文字表記に戻っているので、お持ちの方は確認してみてください。

 

カタカナ表記も混在しているようですね。世界最大の音楽データベースサイトとして知られるDiscogsで確認したところ、アナログ盤の帯は「シュガーベイブ」(中黒なし)、CDは「シュガー・ベイブ」(中黒あり)になっていました。

 

もちろん、当記事は「シュガーベイブ」表記を採用しております。レコードを紹介している記事ですので。

 

■大貫妙子 『SUNSHOWER』

大貫妙子 『SUNSHOWER』 LP (GW-4029) / Japan / 1977

 

シュガーベイブのレコードを紹介したので、こちらも。

 

テレビ東京系列で放送中のバラエティ番組『YOUは何しに日本へ?』で取り上げられたことで話題になった大貫妙子の2ndアルバム『SUNSHOWER』(1977年)。大貫さんのサイン入りです。

 

このアルバムのオリジナル盤LP(GW-4029)も高額ですね。テレビ番組の影響もあり、再発盤LPが何度もリプレスされているので、レコードで聴いてみたい方はそちらをぜひ。

 

山下達郎関連作品

 

ここからは、山下達郎関連のレコードをいくつか紹介していきたいと思います。

 

それでは、山下達郎がRCA/Air Records時代に発表した楽曲の作詞を数多く手掛けた吉田美奈子のシングル盤から。

 

■吉田美奈子 『恋は流星 Part I / 恋は流星 Part II』

吉田美奈子 『恋は流星 Part I / 恋は流星 Part II』 promo 7” (RVS-514) / Japan / 1977

 

1977年3月25日に発表された吉田美奈子のシングル『恋は流星』。山下達郎がアレンジ/プロデュースを担当している人気盤です。

 

同時発売された5thアルバム『TWILIGHT ZONE』に収録されたテイクとは異なる2つのバージョンをカップリング。村上“ポンタ”秀一のドラム・ブレイクから始まる「恋は流星 Part II」が最高です。

 

こちらも『YOUは何しに日本へ?』で取り上げられたレコードですが、それ以前から高値で取引されているレア盤で、探している方も多いはず。

 

1995年にVivid Soundから発売された復刻盤7インチ(VSEP-813)や、「Town」とのカップリングで2016年に再発された12インチ(MHJ7 4)も今や入手困難になってしまいました。

 

なお、今回掲載したのは見本盤の7インチ。吉田美奈子さんのサイン入りです。

 

■アン・ルイス 『ピンク・キャット』

アン・ルイス 『ピンク・キャット』』 promo LP (SJX-20142) / Japan / 1979

 

アン・ルイスが1979年に発表した山下達郎プロデュース作品『ピンク・キャット』(英題『PINK PUSSY CAT』)の初回限定カラーレコード。見本盤です。

 

11曲中8曲のアレンジを山下達郎が担当(3曲は椎名和夫との共同アレンジ)。「シャンプー」の作曲も手掛けていますね。

 

吉田美奈子が作詞作曲、山下達郎が編曲した「Alone in the Dark」の人気が高く、2017年に7インチ化されています。

 

■アン・ルイス 『恋のブギ・ウギ・トレイン / 愛・イッツ・マイ・ライフ』

アン・ルイス 『恋のブギ・ウギ・トレイン / 愛・イッツ・マイ・ライフ』 7” (SV-6672) / Japan / 1979

 

山下達郎&吉田美奈子が手掛けたアン・ルイス作品といえば、こちらも外せません。1979年12月にリリースされたシングルで、AB面共に吉田美奈子が作詞、山下達郎が作編曲を担当。翌年6月には「恋のブギ・ウギ・トレイン」の英語版「Boogie Woogie Love Train」が発表されています。

 

和モノ・ブーム以降にアン・ルイスを知った世代のリスナーにとっては、大ヒットした「ラ・セゾン」や「六本木心中」以上になじみ深い曲かもしれませんね。

 

■中原理恵 『TOUCH ME』

中原理恵 『TOUCH ME』 LP (25AH 404) / Japan / 1978

 

1978年に発表された中原理恵のデビューアルバム『TOUCH ME』。山下達郎が作編曲者として数曲参加しています(「朝まで一緒に」のアレンジは、坂本龍一と共同)。

 

このアルバムの一番人気は、小林泉美が作編曲を担当した「とぎれ とぎれて」でしょうか。小林泉美率いるFlying Mimi Bandのタイトな演奏が最高な、和モノの人気曲です。

 

■笠井紀美子 『TOKYO SPECIAL』

笠井紀美子 『TOKYO SPECIAL』 LP (25AP 730) / Japan / 1977

 

ジャズ・シンガーとして活動していた笠井紀美子が、1977年に発表した日本語作品『TOKYO SPECIAL』。

 

2020年に7インチが復刻されて話題を呼んだ「バイブレイション (Love Celebration)」は、山下達郎の「Love Celebration」を日本語でカバーしたもの。ECD「バイブレーション feat. HAC, SEINU (727 Productions)」の元ネタとして日本語ラップ・ファンからもよく知られている曲ですね。

 

ジャズメンによる和モノ・レアグルーヴ

 

笠井紀美子のレコードを紹介したので、ここからはジャズ・ミュージシャンが制作した和モノの人気作品を掲載。和ジャズのコーナーにも、和モノのコーナーにも置けるようなレコードです。

和モノや和ジャズという呼称も、音楽ファンの間ですっかり定着した感がありますね。

 

■中村照夫グループ 『UNICORN』

中村照夫グループ 『UNICORN』 LP (TBM-18) / Japan / 1973

 

ニューヨークで活躍していたジャズ・ベーシストの中村照夫が、スティーヴ・グロスマン(サックス)、チャールズ・サリヴァン(トランペット)、ジョージ・ケイブルス(ピアノ、エレピ)、レニー・ホワイト(ドラム)、アル・ムザーン(ドラム)といった        凄腕ミュージシャン達と制作した1stアルバム『ユニコーン』(1973年)。中村照夫さんのサイン入りです。

 

70年代に数多くの傑作を世に送り出した国内ジャズ・レーベルとして知られるスリー・ブラインド・マイスからリリースされた本作は、古くからロンドンのレアグルーヴ・シーンで人気を博している大名盤。高値で取引されているオリジナル盤(TBM-18)はもちろん、イギリスや国内で再発されたアナログ盤もなかなか見かけません。

 

2022年5月25日にディスクユニオンが運営するCraftman Recordsから、オリジナル盤の帯やライナーを再現した復刻盤LP(CMRS-0157)がリリースされましたが、即日完売したレコードショップも多いようです。

 

■益田幹夫 『CORAZÓN』

益田幹夫 『CORAZÓN』 LP (SKS 8004) / Japan / 1979

 

日野皓正や渡辺貞夫のグループで活躍していた鍵盤奏者の益田幹夫が、1979年に発表したリーダー作『コラソン』。

 

1978年11月に、バーナード・パーディ(ドラム)やアンソニー・ジャクソン(ベース)といった売れっ子ミュージシャンを起用し、ニューヨークのエレクトリック・レディ・スタジオで録音したアルバムです。アレンジを担当したのは、デヴィッド・マシューズ。

 

キャロル・キングの「Corazón」や、渡辺貞夫の「Samba Em Praia」などを取り上げていますが、一番の聴きどころは「Let’s Get Together」。過去のリーダー作や土岐英史のアルバムにも吹き込んでいる名曲です。益田幹夫の代表曲と言ってよいでしょう。

 

なお、2021年にイタリアのHoly Basil Recordsから、本作の再発盤LP(HBR-003)が500枚限定でリリースされています。

 

■SAMMY 『Rock Steady / Summertime』

SAMMY 『Rock Steady / Summertime』 7” (US45-001) / Japan / 2013

 

70年代に活躍したソウル・シンガーのサミーが歌う2曲のカバーをカップリングした7インチ。世界中のコレクターが信頼を寄せる高円寺のレコード店「Universounds」 が、2013年に発足させたレーベルの第一段としてリリースしたレコードです。

 

A面は、稲垣次郎率いるSOUL MEDIAとの共演作『女・ロビンソン・クルーソー/ロック・ステディ』(1972年)に収録された「Rock Steady」。本家アレサ・フランクリンに引けを取らないキラーチューンです。

 

カップリングは、FREEDOM UNITYとの共演作『朝日のあたる家 SALUTE TO SOUL』(1971年)収録の「Summertime」。言わずと知れたジョージ・ガーシュウィンの名曲ですね。

 

■日野皓正クインテット 『スネイク・ヒップ / 白昼の襲撃 テーマ』

日野皓正クインテット 『スネイク・ヒップ / 白昼の襲撃 テーマ』 7” (LL-10111-J) / Japan / 1969

 

日野皓正が音楽を担当した西村潔監督作品『白昼の襲撃』(1970年2月公開)のサウンドトラックとして発売された7インチ。映画の公開に先がけて1969年11月に発表されたこのシングルは、同時期に発売された『HI-NOLOGY』のLPと共に大ヒットを記録しています。

 

ジャズの枠を超え、空前のヒノテル・ブームを巻き起こした日野皓正クインテットのメンバーは、日野皓正(トランペット)、村岡健(テナーサックス)、鈴木宏昌(エレピ)、稲葉国光(ベース)、日野元彦(ドラム)。

 

90年代以降も多くのDJにプレイされた国産ジャズ・ファンクの定番です。

 

■菊地雅章 『ヘアピン・サーカス』

菊地雅章 『ヘアピン・サーカス』 LP (FX-8521) / Japan / 1972

 

1972年に公開された『ヘアピン・サーカス』のサントラ盤LP。こちらも西村潔監督作品ですね。

 

音楽を担当したのは、60年代から日本のジャズ・シーンを牽引し、海外でも活躍したピアニストの菊地雅章(きくちまさぶみ)。映画のサントラ盤でありながら、他のリーダー作に勝るとも劣らないエレクトリック・ジャズの傑作で、国内外のジャズやレアグルーヴのリスナーから人気の高い作品です。

 

メンバーは菊地雅章(ピアノ、エレピ)、菊地雅洋(オルガン)、峰厚介(ソプラノサックス)、鈴木良雄(ベース)、日野元彦(ドラム)、中村よしゆき(ドラム)。

 

国内サントラ盤のレコード

 

『スネイク・ヒップ』と『ヘアピン・サーカス』のレコードを取り上げたので、日本映画やドラマ、アニメのサントラ盤も紹介していきましょう。

 

2022年5月20日に公開された「映画音楽をレコードで聴こう! 映画ファンも音楽ファンも注目すべきサントラ盤のレコード」という記事で、洋画のサントラ盤レコードを紹介しておりますが、国内作品のサントラ盤にも優れたものがたくさんあります。

 

■大野雄二 『ルパン三世・2』

大野雄二 『ルパン三世・2』 LP (YP-7072-AX) / Japan / 1978

 

ルパンが赤いジャケットを着用した2ndシリーズ(1977~1980年)のサウンドトラック第二弾。サンドラ・ホーンことサンディーが歌う峰不二子のテーマ曲「ラヴ・スコール」を収録した人気盤です。

 

音楽を手掛けているのは、2ndシリーズ以降、現在までルパン音楽を担当しているジャズ・ピアニスト/作編曲家の大野雄二。

 

『ルパン三世』のレコードを中心に、アニメのレコードを紹介したこちらの記事もぜひご覧ください。

 

■大野雄二 『野性の証明』

大野雄二 『野性の証明』 LP (YX-5001-AX) / Japan / 1978

1978年に劇場公開された『野性の証明』。薬師丸ひろ子のスクリーンデビュー作ですね。この映画のサントラ盤も大野雄二の作品です。『ルパン三世』の音楽が好きな方はぜひ。

 

『キャプテンフューチャー』や『大追跡』『犬神家の一族』『黄金の犬』など、大野雄二が手掛けたサントラ盤は、音楽ファンから評価の高い作品が多いのでチェックしてみてください。

 

■柳ジョージ、Nadjaバンド 『祭ばやしが聞こえるのテーマ / ドリームレーサーI』

柳ジョージ、Nadjaバンド 『祭ばやしが聞こえるのテーマ / ドリームレーサーI』 7” (BMA-1003) / Japan / 1977

 

1977年10月から1978年3月まで日本テレビ系で放送された萩原健一主演ドラマ『祭ばやしが聞こえる』の主題歌と、インスト曲「ドリームレーサーI」を収録した7インチ。

 

演奏は、萩原健一のバックを務めていたNadjaバンド。主題歌に柳ジョージが起用されたのは、萩原健一の推薦によるものです。

 

作編曲を担当したのは、Nadjaバンドの主要メンバーでもある大野克夫。

 

■ミッキー吉野グループ(ゴダイゴ) 『男たちの旅路』

ミッキー吉野グループ(ゴダイゴ) 『男たちの旅路』 LP (YX-5002-N) / Japan / 1978

 

1976年2月から1982年2月までNHKで放送された山田太一脚本ドラマ『男たちの旅路』のサントラ盤LP。

 

和モノ愛好家から人気の高い作品で、2017年には本作から厳選された4曲を収録した7インチ(GMT-53)が発売されています。

 

ミッキー吉野グループの作品として発表されていますが、タケカワユキヒデを除いたゴダイゴのメンバーで制作されているので、帯やライナーに「ミッキー吉野グループ(ゴダイゴ)」とクレジットされています。残念ながら、私が所有しているLPには帯が付いておりませんが・・・。

 

■SHŌGUN 『Lonely Man / Bad City』

SHŌGUN 『Lonely Man / Bad City』 7” (06SH 647) / Japan / 1979

 

1979年9月から1980年4月まで日本テレビ系列で放送された『探偵物語』のオープニングとエンディングを収録した7インチ。

 

放送終了後も何度も再放送され、幅広い世代から愛される『探偵物語』は、松田優作の代表作のひとつとして知られる不朽の名作です。

 

音楽を担当したのは、芳野藤丸(ギター、ヴォーカル)や山木秀夫(ドラム)が在籍したSHŌGUN。このシングルを出す半年前にも、ドラマ『俺たちは天使だ!』の主題歌「男達のメロディー」をヒットさせているロックバンドです。

 

海外ミュージシャンとの共演盤

 

中村照夫『ユニコーン』や益田幹夫『コラソン』のように、海外で現地ミュージシャンと制作された和ジャズ作品が数多く存在しますが、ロックやニューミュージックにカテゴライズされるようなアーティストが海外ミュージシャンを起用した作品もたくさんあります。

 

まずは、1968年に結成されて以来、アメリカ西海岸を代表するファンク・バンドとして精力的に活動を続けるTOWER OF POWERが参加した作品から。

 

■かまやつひろし 『我が良き友よ / ゴロワーズを吸ったことがあるかい』

かまやつひろし 『我が良き友よ / ゴロワーズを吸ったことがあるかい』 7” (ETP-20098) / Japan / 1975

 

こちらは、かまやつひろしが1975年に発表したシングルです。吉田拓郎が作詞作曲を手掛けたA面が、オリコン年間チャート9位を記録した大ヒット曲として知られていますが、和モノ愛好家から人気が高いのはB面の「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」。

 

不本意だったというA面を録る代わりに、来日中だったTOWER OF POWERをバックに起用して好きなことをやったという「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」は、90年代に再評価され、セルフリメイク版も制作されました。

 

なお、TOWER OF POWERは同時期に、RCサクセションのレコーディングにも参加しています。

 

■RCサクセション 『シングル・マン』

RCサクセション 『シングル・マン』 LP (MR 3236) / Japan / 1980 Reissue

 

名曲「スロー・バラード」を収録したRCサクセションの3rdアルバム 『シングル・マン』。契約上の都合によりクレジットされていませんが、アルバムのトップを飾る「ファンからの贈りもの」にTOWER OF POWERが参加しています。

 

1976年4月にポリドールレコードから発売された『シングル・マン』は売れ行き不調により1年足らずで廃盤。しかし、1979年に音楽評論家の吉見佑子を中心とした「シングル・マン再発実行委員会」の呼びかけにより、自主限定販売が実現。そして翌年、ポリドールから正式に再発されました。

 

私が所有しているLPは、1980年に出たポリドールの再発盤です。帯に「こんな素晴らしいレコードを廃盤にしていて申しわけありません。」と記載されているので、画像をご覧ください。

 

■朱里エイコ 『愛のめざめ / 絶体絶命』

朱里エイコ 『愛のめざめ / 絶体絶命』 7” (L-1307W) / Japan / 1976

 

こちらもTOWER OF POWER参加作品。1976年に発表された朱里エイコのシングルです。

 

TOWER OF POWERのメンバーが提供した「愛のめざめ(I’m Not a Little Girl Anymore)」と「絶体絶命(Burning My Bridges Behind Me)」をカップリング。演奏もTOWER OF POWERが担当しています。A面はリンダ・ルイスが4thアルバム『NOT A LITTLE GIRL ANYMORE』(1975年)で歌っている曲ですね。

 

2019年には、アナログレコード・プレスメーカーの東洋化成が主催する『レコードの日』の限定商品として復刻されています(WQKL-5)。

 

■五輪真弓 『蒼空』

五輪真弓 『蒼空』 LP (25AH 350) / Japan / 1977

 

1977年に発表された五輪真弓のLA録音作品『蒼空』(英題『TODAY』)。グルーヴィーな「東京」や「ゲーム」を収録した人気盤ですね。

 

プロデューサーは、超大物コンポーザーのデヴィッド・キャンベル。ラリー・カールトン(ギター)、リー・リトナー(ギター)、ウィルトン・フェルダー(ベース)、ハーヴィー・メイソン(ドラム)、パトリース・ラッシェン(キーボード)といった錚々たるメンバーが参加しています。

 

■久保田蘭 『くやしいけれど愛してる / 冬の宿』

久保田蘭 『くやしいけれど愛してる / 冬の宿』 promo 12” (TLP-663) / Japan / 1983

 

1980年にデビューした島崎博美が、久保田蘭に改名して1983年に発表した『くやしいけれど愛してる』のプロモーション用12インチ。ジャケットに「Debut Single 3/21 on Sale」と記載されているので、一般発売前に放送局などに配られたのでしょうね。

 

ヴォーカルは演歌のような純和風スタイルですが、バック務めるのは海外ミュージシャンで、なんとジャズ・トランペッターのフレディ・ハバードと、中村照夫の『ユニコーン』で鍵盤を弾いているジョージ・ケイブルスが参加しています。

 

■吉田美奈子 『LIGHT’N UP』

吉田美奈子 『LIGHT’N UP』 promo LP (ALR-28040) / Japan / 1982

 

再び吉田美奈子のレコードを紹介。1982年に発表された9作目のスタジオアルバム『LIGHT’N UP』の見本盤LPです。

 

「Love Shower」の管弦アレンジと、「斜陽 (Reflection)」のコーラスで山下達郎が参加していますが、デヴィッド・サンボーン(アルトサックス)やランディ・ブレッカー(トランペット)、マイケル・ブレッカー(テナーサックス)といった海外の一流ミュージシャンが参加しているので、こちらで紹介することにしました。

 

DJから人気のタイトル曲や、稀代の名曲「頬に夜の灯」を収録した傑作『LIGHT’N UP』は、シティ・ポップ・ファンからも人気を集めています。

 

2018年に、ソニーのアナログ専門レーベルGreat Tracksが『LIGHT’N UP』のアナログ盤を復刻(MHJL-18)。多くのレコード店ではすでに完売していますが、当記事を作成している2022年5月の時点では、Sony Music Shopのサイトで購入可能でした。気になる方はお急ぎを。

 

和モノの愛聴シングル盤

 

最後に、お気に入りの和モノ盤を紹介。長年愛聴しているシングルを5枚選んでみました。

 

■和田アキ子 『どしゃぶりの雨の中で / ボーイ・アンド・ガール』

和田アキ子 『どしゃぶりの雨の中で / ボーイ・アンド・ガール』 7” (JRT-1020) / Japan / 1969

 

1969年4月に発売された和田アキ子の2ndシングル。

 

オリコンで19位を記録した和田アキ子の出世作として知られる「どしゃぶりの雨の中で」は、出だしのオルガンだけでノックアウトされてしまうR&B歌謡の名曲です。

 

そしてB面は、和モノDJに愛され続けている「ボーイ・アンド・ガール」。コモエスタ八重樫が選曲したコンピレーション・アルバム『DYNAMITE SOUL WADA AKIKO』(1996年)のトップに収録されたことで、一般の音楽ファンにも広く浸透。“R&Bシンガー”和田アキ子の再評価を決定づけた最重要曲です。

 

■中森明菜 『赤い鳥逃げた / BABYLON』

中森明菜 『赤い鳥逃げた / BABYLON』 12” (L-3601) / Japan / 1985

 

1985年5月1日にリリースされた中森明菜の12インチシングル。A面の「赤い鳥逃げた」は、日本レコード大賞やFNS歌謡祭・グランプリなどを受賞した「ミ・アモーレ」(1985年3月8日発売)の別歌詞・ロングバージョンです。

 

作編曲を担当したのは、鍵盤奏者の松岡直也。ラテン色を強めたアレンジが秀逸です。個人的には「ミ・アモーレ」よりも断然好み。

 

■浅野ゆう子 『サマーチャンピオン / 仮面舞踏会』

浅野ゆう子 『サマーチャンピオン / 仮面舞踏会』 7” (RVS-1171) / Japan / 1979

 

女優の浅野ゆう子が、歌手として活動していた時代に発表された14枚目のシングル。

 

A面の「サマーチャンピオン」は、セルジオ・メンデス率いるBRASIL ’88の「Summer Dream」の日本語カバー。ちなみにBRASIL ’88も、同時期に日本語版を発表しています。

 

B面の「仮面舞踏会」も良いですね。タイトなドラムに耳を奪われます。

 

■CARLOS TOSHIKI AND OMEGA TRIBE 『アクアマリンのままでいて / 海流のなかの島々』

CARLOS TOSHIKI AND OMEGA TRIBE 『アクアマリンのままでいて / 海流のなかの島々』 7” (10314-07) / Japan / 1988

 

浅野ゆう子の曲を紹介したので、お次はこちらを。

 

一十三十一やミズノマリ(paris match)、Every Little Thingといったアーティストにカバーされ、シティ・ポップ・ファンを中心に再評価が進むカルロス・トシキ&オメガトライブの名曲「アクアマリンのままでいて」。

 

「君は1000%」や「Super Chance」「Miss Lonely Eyes」をヒットさせた1986オメガトライブが、メンバーチェンジを機に改名。カルロス・トシキ&オメガトライブ名義で発表した2枚目のシングルです(1枚目は「Down Town Mystery」)。

 

浅野ゆう子と浅野温子が主演を務めたフジテレビ系列のトレンディドラマ『抱きしめたい!』の主題歌に起用された「アクアマリンのままでいて」は、ドラマと共にヒットを記録。主演の2人はこのドラマをきっかけにW浅野(ダブルあさの)と呼ばれ、一世を風靡しました。

 

■ミノタウロス、ビリー&フリーザー 『阿修羅 パート1、パート2 ~阿修羅・原のテーマ』

ミノタウロス、ビリー&フリーザー 『阿修羅 パート1、パート2 ~阿修羅・原のテーマ』 7” (GK-289) / Japan / 1979

 

今回の記事は定番のレコードを多めに紹介してきましたが、最後にマニアックなレコードを。

 

1976年に日本人ラグビー選手として史上初の世界選抜メンバーに選出された原進が、1977年に国際プロレスに入団。1978年6月29日のデビュー戦から半年後、作家の野坂昭如によって命名された阿修羅・原というリングネームを名乗り始めたころから使用されるようになった入場テーマ曲「阿修羅 パート1」。

(わずかながら、B面のパート2もプロレス会場で使用されたことがあるそうです)

 

作編曲家/鍵盤奏者の淡海悟郎(おうみごろう)率いるミノタウロスの演奏とビリー&フリーザーのコーラスからなる「阿修羅 パート1」は、RHYMESTERのDJ JINも絶賛するジャズ・ファンク。プロレス実況アナウンサーの清野茂樹がパーソナリティを務めるラジオ番組『真夜中のハーリー&レイス』(ラジオ日本)に出演した際に披露したプロレス・テーマ曲しばりのDJミックスでも、この曲を取り上げていました。

 

国際プロレス崩壊後、全日本プロレスやSWS、WARといった団体で活躍した阿修羅・原。1987年に天龍源一郎と結成した龍原砲は、日本プロレス史に残る名タッグチームです。

 

1994年に現役を退き、故郷の長崎県でラグビーを指導していた原さんが逝去されたのは、2015年4月28日。五本の指に入るくらい大好きだったプロレスラーの訃報をニュースで知ったときは、本当にショックでした。謹んで哀悼の意を表します。

 

執筆:五辺宏明

 

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