日本で企画・制作された海外アーティストのレコード

日本で生産されたレコードが、海外で人気です。THE ROLLING STONESやLED ZEPPELINといった大物ロックバンドの帯付きLPや、山下達郎、吉田美奈子、大貫妙子の人気盤がプレミア化していることをご存じの方も多いことでしょう。

 

そして、日本のレコード会社が独自に制作した海外アーティストのレコードも高値で取引されているものがたくさんあります。遠い島国だけで販売されていたそれらのレコードが、海外のコレクター達から注目を集めるのは当然のことでしょうね。

目次

■ブルワッキー・アンド・ザ・チョーズン・ブラザーズ 『アイ・ル・ビー・グッド』

BULLWACKIE AND THE CHOSEN BROTHERS 『I’LL BE GOOD』 LP (YHL-102) / Japan / 1989

ニューヨークを拠点とする名門レゲエ・レーベルWackie’s を主宰するブルワッキーことロイド・バーンズが、1989年に日本のAlpha Enterpriseから発表した『I’LL BE GOOD』。残念ながら、私が所有しているLPには帯が付いておりません。

 

ホレス・アンディの大名盤『DANCE HALL STYLE』を筆頭に、数々の傑作を手掛けたプロデューサーのブルワッキー自身が歌う本作は、ラヴァーズ、ルーツ、ダブなどを好むレゲエ・ファンに推薦したい好作品です。こんな良いアルバムが日本以外で発売されなかったなんて、本当にもったいない!

■ジミ・ヘンドリックス 『ベスト・オブ・ジミ・ヘンドリックス』

JIMI HENDRIX 『BEST OF JIMI HENDRIX』 2LP (MP 8641/2) / Japan / 197?

こちらは、70年代にポリドールから発売されたジミ・ヘンドリックスの2枚組LP。ジャケットの写真に惹かれて購入したレコードです。

 

ジミヘンのベスト盤が欲しくて買ったわけではありません。目当てはあくまでもジャケットです。

 

ジミヘンのマニアではない私でさえ欲しいと思ってしまったこの素晴らしいジャケットの2LPを入手したいと考えている海外のジミヘン・コレクターも、おそらく存在するのではないかと。

 

こちらも発売時には、ジャケットの上部に乗せるタイプの被せ帯(キャップ帯)が付いていたようです。帯付きの完品であれば、さらにコレクター達の収集意欲を刺激するに違いありません。

 

人気の高い国内企画盤を手放す際は、MIONアップサイクルにご連絡ください。帯付きレコードも大歓迎です!

 

(当記事のアーティスト名は、レコードの帯やジャケット、ライナーノーツ等に使用されているカタカナ表記を採用しています)

日本独自の編集盤

それでは、まず日本のレコード会社が独自に選曲したベスト盤や、4曲入りの7インチEPを紹介いたします。収録曲も記載しているのでご覧ください。

■ボブ・ディラン 『風に吹かれて』

BOB DYLAN 『Blowin’ in the Wind』 7” EP (SONE 70025) / Japan / 1968

side-A

  1. Blowin’ in the Wind
  2. Like a Rolling Stone

 

side-B

  1. Mr. Tambourine Man
  2. The Times They Are a-Changin’

 

CBS・ソニーレコードから発売された4曲入りの7インチEP。入門編として良い選曲だと思います。「これからボブ・ディランを聴いてみよう」という方はぜひ。

■ザ・ゾンビーズ 『好きさ 好きさ 好きさ』

THE ZOMBIES 『I Love You』 7” EP (LS-114) / Japan / 1967

side-A

  1. I Love You
  2. Tell Her No

 

side-B

  1. She’s Not There
  2. Indication

 

1961年にロンドンで結成されたTHE ZOMBIESの4曲入り7インチEP。キングレコードから発売されたものです。

 

全米シングルチャート2位を記録したデビュー曲の「She’s Not There」をさしおいて「I Love You」の邦題である「好きさ 好きさ 好きさ」がこのEPのタイトルに採用されたのは、日本の人気GS(グループサウンズ)バンドのザ・カーナビーツによる日本語カバーが大ヒットしていたからでしょうね。ジャケットにも「これが本場のカーナビー・ビート・サウンド」と書かれておりますので。

(カーナビーというのは、ロンドンのカーナビー・ストリートのことです)

■フランス・ギャル 『すてきなフランス・ギャル』

FRANCE GALL 『Un Prince Charmant』 7” EP (SFL-3141) / Japan / 1966

side-A

  1. Un Prince Charmant
  2. Baby Pop

 

side-B

  1. Nous Ne Sommes Pas des Anges
  2. L’Amérique

 

フランス・ギャルの初来日を記念して制作された4曲入りの7インチEP。発売元は日本ビクターです。

 

A面1曲目に選ばれたのは、フランス・ギャル自身が歌う日本語版も制作された「Un Prince Charmant」。邦題は「すてきな王子様」です。未聴ですが、中尾ミエもカバーしているようですね。

■ブラック・サバス 『ベスト・オブ・ブラック・サバス』

BLACK SABBATH 『THE BEST OF BLACK SABBATH』 LP (FD-94) / Japan / 197?

side-A

  1. Sweet Leaf
  2. Evil Woman
  3. Fairies Wear Boots
  4. Wicked World

 

side-B

  1. Black Sabbath
  2. Children of the Grave
  3. Into the Void
  4. Paranoid

 

日本フォノグラムから発売されたBLACK SABBATHの独自編集盤。

 

正確な発売年月日はわかりませんが、1971年に発表された3rdアルバム『MASTER OF REALITY』までの楽曲で構成されているので、70年代初頭に出たレコードではないかと。

 

見開きジャケットのデザインが秀逸です。

海外でも高値で取引されるマニア垂涎の1枚ですが、残念なことに「Iron Man」と「War Pigs」が入っていません。

 

特に「Iron Man」は、人気プロレス・タッグチームのザ・ロード・ウォリアーズの入場テーマ曲として80~90年代のテレビ中継で流れていたことから、音楽ファン以外からも人気の高い曲です。ギタリストのトニー・アイオミが2011年に発表した自伝のタイトルも『Iron Man』ですからね。

 

横浜レコードのサイトに掲載された7インチの記事で紹介した『惡魔の世界』の国内盤シングルも「Iron Man」はB面扱いでした。このベスト盤が出た当時は、人気のない曲だったのでしょうか?

■テリー・キャリアー 『TOKYO MOON』

TERRY CALLIER 『TOKYO MOON』 LP+CD (MNGP-017) / Japan / 2018

side-A

  1. Ordinary Joe (Live)
  2. Just My Imagination
  3. The Hood I Left Behind

side-B

  1. Tokyo Moon
  2. Chelsea Blue
  3. Rice and Beans
  4. Jessie and Alice

アナログレコード・プレスメーカーの東洋化成が主催する『レコードの日』の限定商品として、2018年に発売されたテリー・キャリアーのコンピレーション。アナログ盤と同じ内容のCD付きです。

至極の名曲「Tokyo Moon」を筆頭に、イギリスのMr Bongoから発表された作品の中から、アナログになっていなかった楽曲を集めたもので、選曲を担当したのはDJ/音楽ライターとして「ムジカノッサ」を主宰する中村智昭。

2000年にロンドンで録音されたライブアルバム『ALIVE』(2001年発表)の10曲入りCDのみに収録され、6曲入りのLPには入らなかった「Ordinary Joe」が収録されているのが、ファンとしては嬉しい限り。

ライブ・イン・ジャパン

海外アーティストの来日公演を録音して制作されたライブアルバムの中には、優れた作品がたくさんあり、後に海外盤が発売されたものも数多く存在します。

■ジョン・コルトレーン 『コルトレーン・イン・ジャパン』

JOHN COLTRANE 『COLTRANE IN JAPAN』 3LP (IMR-9036C) / Japan / 1973

1967年7月17日にこの世を去ったジョン・コルトレーンが来日したのは、1966年7月。亡くなる1年前に実現した最初で最後のジャパン・ツアーから、2つのライブアルバムが制作されています。

 

来日メンバーは、ジョン・コルトレーン(サックス)、ファラオ・サンダース(サックス)、アリス・コルトレーン(ピアノ)、ジミー・ギャリソン(ベース)、ラシッド・アリ(ドラム)。

 

1973年に発売された『COLTRANE IN JAPAN』は、1966年7月22日に新宿厚生年金会館で行われたツアー最終日の模様を収めた3枚組のボックス・セット(3枚目は片面プレスなので、実質的には2枚半)。

 

ニッポン放送が一度だけラジオ放送するために録音した音源を、東芝音楽工業が作品化したものです。

 

ライナーノーツによると、当日の演奏が録音されていることをコルトレーンやメンバーは知らなかったようで、ピアニストとして出演していた妻のアリスも、このような音源が残っていることに驚き、発売を快諾したとのこと。

 

レコード化されることを意識せずにくり広げられた2時間10分の熱演が完全収録されていることを考えると、非常に貴重な音源といえるでしょう。

■ジョン・コルトレーン 『セカンド・ナイト・イン・トーキョー』

JOHN COLTRANE QUINTET 『SECOND NIGHT IN TOKYO』 3LP (YB-8508~10-AI) / Japan / 1977

没後10年となる1977年に、日本コロムビアから発売された3枚組ボックス・セット。

 

こちらはTBSラジオが放送用に録音した音源で、1966年7月11日に東京サンケイホールで行われたツアー2日目の演奏(side-1~5)と、7月9日に東京プリンスホテルで行われたコルトレーンのインタビュー(side-6)が収録されています。

 

ちなみに、コルトレーンのジャパン・ツアー初日は1966年7月10日。THE BEATLESの武道館公演(1966年6月30日~7月2日)の8日後です。

■マイルス・デイビス 『アガルタの凱歌』

MILES DAVIS 『AGHARTA』 2LP (SOPJ 92-93) / Japan / 1975

1975年に3度目の来日を果たしたマイルス・デイビスが、2月1日に大阪フェスティバル・ホールで行った昼夜2公演を、CBS・ソニーがライブレコーディング。

 

こちらは、午後4時からスタートした昼の部を完全収録した『アガルタの凱歌』。なお、2ndプレス以降は日本語タイトルが『アガルタ』に改められています。

 

アートワークを手掛けたのは横尾忠則。ジャケット中央のアルバム・タイトル・ロゴは、当時CBS・ソニーに在籍していた田島照久によるものです。

■マイルス・デイビス 『パンゲアの刻印』

MILES DAVIS 『PANGAEA』 2LP (SOPZ 96-97) / Japan / 1975

昼の部を終え、1時間のインターバルを挟んで午後7時から行われた夜の部を、ノーカットで収録した『パンゲアの刻印』。こちらも2ndプレス以降は『パンゲア』に改題されています。アートワークは田島照久が担当。

 

数年前から体調を崩していたマイルスは、1975年9月5日に行われたニューヨークのセントラル・パークでのライブを最後に、活動を休止。1981年の復帰以降に発表された作品は、70年代の鬼気迫るようなサウンドとは全く異なるものでした。

 

『アガルタ』と『パンゲア』は、ジャズの枠を超えて新たな音楽を作り続けた70年代エレクトリック・マイルスの最後の公式作品ということになります。

■ハービー・ハンコック 『洪水』

HERBIE HANCOCK 『FLOOD』 2LP (SOPZ 98-99) / Japan / 1975

CBS・ソニーが制作したハービー・ハンコックの2枚組ライブアルバム。1975年6月28日の渋谷公会堂と、7月1日の中野サンプラザでのパフォーマンスを収録した人気盤です。

 

ハンコック(ピアノ、シンセサイザー)と共に来日したのは、THE HEADHUNTERSのベニー・マウピン(サックス)、ポール・ジャクソン(ベース)、マイク・クラーク(ドラム)、ビル・サマーズ(パーカッション)、ブラックバード・マックナイト(ギター)。

 

ジャケットのイラストは中西信行。デザインは『パンゲア』の田島照久が担当しています。

■バーツ=ヘンダースン=コナーズ 『ネイマ』

BARTZ - HENDERSON - CONNORS 『DANCE OF MAGIC (LIVE AT NEMU JAZZ INN - 1)』 LP (YQ-7509-CO) / Japan / 1975

ノーマン・コナーズ率いるDANCE OF MAGICのライブ盤。

 

1975年7月19日録音。三重県の合歓の郷(ねむのさと)で開催された『NEMU JAZZ INN』に出演した際の演奏を、日本コロムビアが作品化したものです。

 

参加ミュージシャンはノーマン・コナーズ(ドラム)、ゲイリー・バーツ(アルトサックス)、エディ・ヘンダースン(トランペット)、レジー・ワークマン(ベース)、エルマー・ギブスン(キーボード)。

 

DANCE OF MAGICはノーマン・コナーズのバンドですが、本作はバーツ=ヘンダースン=コナーズ名義で発売されています。おそらく当時は、コナーズよりもバーツやヘンダースンの方が日本のジャズ・ファンに馴染みのある存在だったのでしょうね。

 

アルバムの邦題に起用されたのは、本作のトップを飾る「Naima」(ネイマ)。言わずと知れたジョン・コルトレーンの名バラードです。

日本でレコード化された未発表音源

海外で録音された未発表音源を、日本でレコード化するケースもあります。

■オーネット・コールマン 『未踏峰』

ORNETTE COLEMAN 『THE UNPRECEDENTED MUSIC OF ORNETTE COLEMAN』 LP (UPS-2061-KR) / Japan / 1977

テイチクの「グレイト・アート・オブ・ジャズ・シリーズ」の中の1枚として1977年に発売されたオーネット・コールマンのライブ盤。

 

ライナーノーツには「Recorded at Rome, 1967」と記されていますが、実際は1968年に録音された音源のようです。

 

コールマンはアルトサックス奏者として知られていますが、このライブではトランペットやシャハナーイーというインドのリード楽器も使用。シャハナーイーを吹きまくる「Buddah Blues」は、本作のハイライトといってよいでしょう。

 

個人的には一番好きなコールマンのレコード。録音当時に発表されなかったのが不思議なくらい良い演奏です。

■ボビー・ハッチャーソン 『インナー・グロウ』

BOBBY HUTCHERSON 『INNER GLOW』 LP (GXF 3073) / Japan / 1980

ヴァイブラフォン奏者のボビー・ハッチャーソンが1975年3月にLAで録音した未発表音源を、キングレコードがLP化。「ブルーノート世界初登場1800シリーズ」の第4期作品として、1980年に発売されたものです。

 

本家Blue Note Recordsから発表されたハッチャーソンの人気盤の数々に引けを取らない傑作なので、未聴の方はチェックしてみてください。

日本で制作された海外アーティストのスタジオアルバム

■ベナード・アイグナー 『リトル・ドリーマー』

BENARD IGHNER 『LITTLE DREAMER』 LP (ALR-6002) / Japan / 1978

1978年にアルファレコードによって制作されたベナード・アイグナーの『LITTLE DREAMER』。名曲「Everything Must Change」の作曲者が、自己名義で発表した唯一のフルアルバムです。

 

「日本人ミュージシャンを起用したい」というアイグナーの要望により、村上“ポンタ”秀一(ドラム)、渡辺香津美(ギター)、深町純(キーボード)、浜口茂外也(パーカッション)が参加している本作は、和モノ愛好家からも人気の高いレコード。

 

ランディ・クロフォードやジョージ・ベンソン、ニーナ・シモンといった数多くのシンガーにカバーされた「Everything Must Change」は、クインシー・ジョーンズの大ヒット作『BODY HEAT』(1974年)の収録曲として書かれたもので、ヴォーカルもアイグナーが担当。本作にも再録版が収録されています。

 

アイグナーを語る上で欠かせないのが、マリーナ・ショウの名盤『WHO IS THIS BITCH, ANYWAY?』。プロデュースとヴォーカルアレンジを手掛け、「Loving You Was Like a Party」等の4曲を提供しています。

■イラケレ 『キューバ・リブレ』

IRAKERE 『CUBA LIBRE』 LP (VIJ-28005) / Japan / 1980

キューバ人ピアニストのチューチョ・バルデスによって1973年に結成されたIRAKEREの日本制作アルバム。

 

1980年にJVCからリリースされた本作のプロデュースを手掛けたのは、アレンジャー/ピアニスト/音楽評論家として知られる上田力(うえだちから)。収録された全楽曲の作編曲も上田によるものです。

 

2010年にイギリスのFar Out Recordingsから『CUBA LIBRE』のCDが発売された際に「初CD化」と謳われていましたが、世界最大の音楽データベースサイトとして知られるDiscogsによると、2005年にUniko RecordsというレーベルからCDが出ていたようです(アンオフィシャルなのかもしれませんが)。

日本で制作された海外ジャズミュージシャンのスタジオアルバム

日本では古くからジャズ人気が高く、多くのレコード会社がジャズの名盤を制作しています。

■ディディ・ブリッジウォーター 『アフロ・ブルー』

DEE DEE BRIDGEWATER 『AFRO BLUE』 LP (PA-7095) / Japan / 1974

オーディオメーカーのトリオ(現・JVCケンウッド)のレコード部門であるトリオ・レコードが、1974年に制作したディディ・ブリッジウォーター(※)の1stアルバム『AFRO BLUE』。ディディのサイン入りです。

 

後にグラミー賞を獲得するジャズ・シンガーのデビュー作を、日本のレコード会社が制作していたことを知ったときは驚きました。

 

参加ミュージシャンは、ディディと共にサド・ジョーンズ=メル・ルイス楽団のメンバーとして来日したセシル・ブリッジウォーター(トランペット)、ロン・ブリッジウォーター(テナーサックス)、ローランド・ハナ(ピアノ、エレピ)、ジョージ・ムラーツ(ベース)に、実兄・日野皓正と共に国内ジャズ・シーンで人気を博していた日野元彦(ドラム)。

 

ジョン・コルトレーンが好んでプレイしていたモンゴ・サンタマリア作のタイトル曲を筆頭に、ボビー・ハッチャーソンの名曲「Little B’s Poem」や、ノーマン・コナーズのアルバムでディディが歌っていた「Love from the Sun」など、捨て曲なしの名盤です。



※ライナーノーツに記載されているカタカナ表記の「ディディ・ブリッジウォーター」を採用しましたが、皆さんが馴染みのあるのは「ディー・ディー・ブリッジウォーター」ですよね(私も)。

■アート・アンサンブル・オブ・シカゴ 『エンシェント・トゥ・ザ・フューチャー』

ART ENSEMBLE OF CHICAGO 『ANCIENT TO THE FUTURE: DREAMING OF THE MASTERS SERIES Vol. 1』 LP (DIW-8014) / Japan / 1987

1987年に発表されたART ENSEMBLE OF CHICAGOの国内企画盤。

首都圏を中心にチェーン展開するレコードショップのディスクユニオンが運営するDIWからリリースされた本作は、冒頭に収録されたオリジナル組曲と5曲のカバーで構成されています。

side-A

  1. Ancient to the Future
    (1) Sangaredi (Don Moye)
    (2) Blues for Zen (Joseph Jarman)
  1. Creole Love Call (Duke Ellington)
  2. These Arms of Mine (Otis Redding)

side-B

  1. No Woman No Cry (Bob Marley)
  2. Purple Haze (Jimi Hendrix)
  3. Zombie (Fela Anikulapo Kuti)

カバー曲に話題が集まりがちですが、A面トップの組曲も必聴です。このLPを入手した当時は、組曲と「Zombie」をリピートしていました。

■シェイラ・ジョーダン 『コンファメーション』

SHEILA JORDAN 『CONFIRMATION』 LP (EW-8024) / Japan / 1975

イースト・ウィンドやホワイノット、ベイステイトといった国内のジャズ・レーベルも優れた作品を数多く制作しています。

 

こちらは、ジャズ・ヴォーカリストのシェイラ・ジョーダンが、1975年にイースト・ウィンドから発表した『CONFIRMATION』。イースト・ウィンドは、1974年に発足した日本フォノグラム傘下のジャズ専門レーベルです。

 

シェイラ・ジョーダンといえば、1962年にBlue Noteからリリースされたデビュー作の『PORTRAIT OF SHEILA』が有名ですが、13年ぶりに制作された2枚目のアルバムとなる本作も素晴らしいのでお聴き逃しなく。

■ジョー・リー・ウィルソン 『シャウト・フォ・トレーン』

JOE LEE WILSON & THE BOND STREET + 1 『SHOUT FOR TRANE』 LP (PA-7151) / Japan / 1976

1976年にホワイノットからリリースされたジョー・リー・ウィルソンのリーダー作。

帯付きですが、ジョー・リー・ウィルソンの写真が隠れてしまうので、普段は帯を外しています。

ジャズ評論家の悠雅彦(ゆうまさひこ)によって1975年に設立されたホワイノットは、ニューヨークやシカゴでインディペンデントに活動していたミュージシャン達の作品を世に送り出した国内のジャズ・レーベルです。

 

悠自身が執筆した解説によると、ジョー・リー・ウィルソンのレコードを制作することがホワイノットを立ち上げるひとつのきっかけだったとのこと。

 

ジョー・リー・ウィルソンの名前に聞き覚えがないという方も多いと思いますが、“アーチー・シェップの名盤『ATTICA BLUES』の収録曲「Steam」のヴォーカリスト”と言えば、ドス黒い歌声が脳裏に浮かんでくる方もいらっしゃるかもしれませんね。

■ウディ・ショウ=エイゾー・ローレンス=デイヴ・シュニッター 『ブラック・ルネッサンス』

WOODY SHAW, AZAR LAWRENCE, DAVID SCHNITTER 『BLACK RENAISSANCE』 LP (RVJ-6006) / Japan / 1977

RVC傘下のベイステイトから1977年にリリースされた『BLACK RENAISSANCE』。

 

Harry Whitaker (p)

Woody Shaw (tp)

Azar Lawrence (ts,ss)

David Schnitter (ts)

Buster Williams (b)

Billy Hart (ds,perc)

Howard King (ds,perc)

Mtume (perc)

Earl Bennett (perc)

 

上記のミュージシャンに9人編成のコーラス隊を加えたメンバーで、1976年に録音された作品です。

 

本作が『HE’S COMING』や『COFFY』といったロイ・エアーズの作品で鍵盤を弾いているハリー・ホイテカー(Harry Whitaker)のリーダー作であることは、レアグルーヴ愛好家の間では周知の事実ですが、今回掲載した1stプレスの見本盤(RVJ-6006)は「ウディ・ショウ=エイゾー・ローレンス=デイヴ・シュニッター」名義になっています。おそらく(ハリー・ホイテカーよりも)日本で知名度が高いウディ・ショウやエイゾー・ローレンスの名前で売ろうとしたのでしょうね。

 

なお、1983年に発売された2ndプレス(RJL-2606)は「ハリー・ホイテカー&ウディ・ショウ」に改められています。

■ロイ・ヘインズ 『ラヴ・レター』

ROY HAYNES 『LOVE LETTERS』 LP (VRJL 7009) / Japan / 2002

イースト・ウィンドの設立者である伊藤八十八(いとうやそはち)が2002年に発足させたエイティ・エイツから発売されたロイ・ヘインズ(ドラム)のリーダー作。

 

ニューヨークのアヴァター・スタジオで録音された本作には、ジョシュア・レッドマン(テナーサックス)やクリスチャン・マクブライド(ベース)、ジョン・スコフィールド(ギター)といった凄腕ミュージシャンが参加しています。

 

本作がレコーディングされたのは、ヘインズが77歳のとき。年齢を感じさせない力強いドラミングをご堪能あれ。

■ファラオ・サンダース・カルテット 『ザ・クリエイター・ハズ・ア・マスター・プラン』

PHAROAH SANDERS QUARTET 『THE CREATOR HAS A MASTER PLAN』 LP (TKJV-19125) / Japan / 2003

RCAレコードやアルファレコードでプロデューサーとして活動していた原哲夫が設立したヴィーナスレコードから、2003年に発表されたファラオ・サンダースのリーダー作。

 

『THE CREATOR HAS A MASTER PLAN』は、レーベルを立ち上げて最初に録音された『CRESCENT WITH LOVE』(1993年)以来となるファラオのヴィーナス復帰作。原はアルファ時代にも、ファラオの『WELCOME TO LOVE』(1991年)を制作しています。思い入れの強いアーティストなのでしょうね。

 

アルバム・タイトルに起用された名曲「The Creator Has a Master Plan」の再演をはじめ、ジョン・コルトレーンの名演で知られる「I Want to Talk About You」や、モハメド・アリの半生を描いた映画『アリ/ザ・グレーテスト』(1977年公開)の主題歌「Greatest Love of All」などを取り上げています。

 

昨年(2021年)3月に、人気DJ/プロデューサーのフローティング・ポインツとロンドン交響楽団と共に制作した『PROMISES』を発表し、各方面から称賛を受けたことも記憶に新しい御年81歳のファラオ・サンダース。1966年にコルトレーンと共に初来日した彼が、今なお現役のミュージシャンとして素晴らしい作品を作り続けていることに、心より敬意を表します。




執筆:五辺宏明

Facebook
Twitter
LinkedIn
Email